日本が変わる「いいタイミング」
――いま頑張ってお金を得るのに働いている人が、そういう考えを受け入れる余地はあるでしょうか。
【養老】だから僕は南海トラフ地震の話をするんです。地震が来たら、明日から食べ物をどうするか、トイレの水をどうするか、考えざるを得ない。すると、それがいかに個人の手が届かないものになってしまっているかに気がつくはずで、世界中から安いものを探して買ってくればいい、というわけにいかないことがわかる。そんなことは当たり前なんだけど、日本は戦後、平気でそれをやってきた。
――実際、大災害が来ると困ってしまうので、もうちょっとソフトに変えていける方法はないですか?
【養老】この気候変動による天候不順が続くと世界中が凶作になる可能性もある。いまはそれに備える機運も出てきているし、いいタイミングじゃない? 日常生活を自分の力で何とか立てていく、という原則をみんながもったらいい。人に頼らず、食い物も自分で確保する。釣りなんて大事なことですよね。日本は周りを海に囲まれているから魚くらい捕れなきゃ。近海の漁業って本気でやっていないでしょう。
現代の子どもが抱える根本問題
――資源が育たなくなってしまっていますから。
【養老】だから海藻・海草を育てないといけないし。海を荒らさないということも大事なのに全然やっていない。まず水中のモニタリングをしないといけないですね。そのくらいのことはみんなが関心をもたないといけない。
――海を育てるには森を育てないといけないですね。「日本に健全な森をつくり直す委員会」の活動もそれにつながっていることですよね。
【養老】そうなんです。もうちょっと関心をもってよ、と。関心がもてればひとりでに変わっていきますよ。根本的な問題は、人々の関心が人間だけに向いているから。それをやめてほしいんだよね。とくに子ども。「いいね」の数。他人の意見ばっかり気にしているでしょう。そうではなくて、自然に親しむということは、自分の食べ物とか水か、散歩する場所とか、暇な時間をどう潰すかとか、それをどうするか考えられるということです。
――子どものうちから昆虫採集や魚釣りに触れることは将来そういった考え方を大事にできる素養につながりますか。
【養老】当たり前だね。子どもは別にスマホを握って生まれてくるわけじゃないんだから。
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