※本稿は、榎本博明『被害者意識が強すぎる人たち』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
強すぎる被害者意識の背後にあるもの
被害者意識の背後には日頃の欲求不満があることが少なくないと考えられるが、欲求不満は生理的欲求の阻止によって生じるだけでなく、社会的欲求の阻止によっても生じる。たとえば、職場でイヤなことを言われたり、嫌な態度を取られたり、正当な評価をしてもらえなかったりというようなことが、社会的欲求不満を生じさせる。
心理学者トウェンジーたちは、人から排斥されたと思うことによる欲求不満が攻撃行動を生むかどうかを確かめるための実験を行っている。その実験では、まずはじめに学生集団に共同作業をさせたあとで、つぎの作業でも一緒にやりたいメンバーを選ばせた。
このときほかのメンバーから選択された学生と選択されなかった学生に、別の学生とコンピュータ・ゲームをさせたところ、選択されなかった学生は、たとえゲームの相手が自分を拒絶した人物ではなかったとしても、選択された学生よりも強い不快ノイズを与えていた。このことは、選択されなかった、つまり排斥されたと思うことで生じた欲求不満が攻撃衝動を発散させる行動につながることの証拠と言える。
不満が攻撃行動を増すかどうかの実験
このほかにも、過去1年間に失業を経験した人は、就労を続けている人と比べて、家族に対する暴力などさまざまなタイプの攻撃行動が6倍も多いことが報告されたり、職務上のストレスを強く感じている人ほど、職場で人と口論するなどの言語的行動が目立つことが報告されたりしている。
心理学者ペダーソンたちは、成績の悪さを非難されることで生じた欲求不満が攻撃行動を促進するかどうかを確かめるための実験を行っている。
実験参加者の半分は、難しい課題を与えられ、しかもイライラするような音楽を聴かされながら取り組まされた。そして課題終了後、実験者から、成績が悪いと非難された。このような手順によって欲求不満にさせられた。残りの半分は、易しい課題を与えられ、しかも快適な音楽を聴かされながら取り組んだ。つまり、欲求不満は生じていない。
引き続いて、両者とも後半の課題が与えられた。それは、アシスタントが読み上げるクイズに答えるというものだったが、アシスタントが早口で、しかも読み間違いをするため、参加者たちは良い成績をあげることができなかった。最後に、すべての参加者は、アシスタントの能力を評価するように言われた。

