人は金額そのものではなく、効用で選ぶ
この例からわかるのは、人は単に金額の期待値だけで判断しているわけではない、ということである。では、人は何を基準に判断していると考えればよいのだろうか。
経済学では、不確実な状況において人は「期待効用」に基づいて選択すると考える。期待効用とは、効用の期待値である。つまり、起こり得る結果から得られる効用に、それぞれの確率をかけて足し合わせたものである。
このように、不確実な選択において人は金額の期待値ではなく、期待効用が最も高い選択肢を選ぶとする考え方を期待効用仮説という。
先ほどのくじを、期待効用で考えてみよう。
ある人にとって、確実に1,000円を得ることの安心感は大きい。一方、150万円が当たる可能性があっても確率が非常に低く、ほとんどの場合に0円になるなら、その人にとっての期待効用はそれほど高くならない。
つまり、賞金の期待値ではくじBが高くても、期待効用ではくじAのほうが高くなることがある。人は平均的な金額だけでなく、結果のばらつきや確実性も含めて判断しているのである。
もちろん、別の人であれば、150万円に対する効用がもっと大きく、くじBを選ぶかもしれない。期待効用仮説は「全ての人が同じ選択をする」と言っているのではない。人によって効用の感じ方が違うので、選択も変わると考えるのである。
期待効用を使うと期待値が高い選択肢を避ける人の行動を説明しやすくなる。次に、リスクへの向き合い方を効用関数の形から見ていこう。
効用関数でリスクへの態度はどう変わるのか
人によって効用の感じ方が違うとは、どのようなことだろうか。
ここでは、リスクに対する態度を3つに分けて考える(図表3)。数式そのものを覚えることよりも効用関数の形がどのような行動を表すのかをつかむことが大切である。ここでは、xをくじで得られる金額(万円)とする。
この3つの違いを図で確認しておこう。図表4では、横軸に金額、縦軸に効用をとり、効用関数の形がリスクへの態度をどう表すのかを示している。


