日本が“はしごを外される”可能性

第二に、トランプの無法な行動をみる限り、また、今後もトランプと同傾向の人物が大統領に選ばれる危険はある以上、アメリカの世界政策も対中政策も、いつどのように変化、豹変するかはわかったものではないことも、頭に入れておくべきだろう。

日本の頭越しに米中が接近して日本がはしごを外されるような事態だってありうるのだ(ニクソンが、1971年7月に、日本との間で事前の調整をすることなく電撃的に訪中決定を発表し〔アメリカ政府が日本の駐米大使に事実を通告したのは発表の直前〕、翌年2月には米中共同声明に至ったという有名な前例もある。海外の複数メディアも報じているとおり、トランプが台湾を「同盟国」としてではなく中国との「バーゲニングチップ、交渉材料」として扱う可能性も否定できない中、日本が前のめりに「集団的自衛権行使」に言及することには、前記のとおり、アメリカからはしごを外されるリスクが伴うと思われる。日本だけが中国との間に深刻な確執を残したまま取り残される可能性も、ないとはいえない)。

筆者・瀬木比呂志さん
筆者・瀬木比呂志さん(ⓒKADOKAWA)

自衛を考えるうえで必須な主体性

第三に、そもそも、自衛については、「まずみずからが主体的にその必要性を客観的に検証し、外交面のコミュニケーションとのバランスをとりながら、慎重に方針、政策を立て、その上で、必要に応じ他国とも協力してゆく」というのが本来の姿なのであり、「アメリカは本当に日本を守ってくれるのか?」という問いの立て方自体が、実をいえば、問題を含んでいるといえよう。

瀬木比呂志『法律家が見た日本社会の病理「空気」を打ち破る個と論理の構築へ』(KADOKAWA)
瀬木比呂志『法律家が見た日本社会の病理 「空気」を打ち破る個と論理の構築へ』(KADOKAWA)

本書『法律家が見た日本社会の病理』で先述したとおり、米軍駐留や基地の使用については、いわゆる大国でなくとも、対等の立場で考え、必要に応じて毅然とした対応をとっている例がいくつもあることを、今一度思い起こすべきであろう。

たとえ日米安保条約を前提とするとしても、日本は、みずからの国益と危機管理の観点から、ほかの多くの国々と同様、アメリカと対等の立場で主体的に自衛を考えてゆくことが必要であり、また本来可能なはずである。集団的自衛権行使の是非とその内容についても、同様のことがいえる。

一つの制度であり取決めである以上、必要に応じた見直し、改廃は、当然に考えられてよいはずなのだから。

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