※本稿は、下畑享良『医者が教える 一生パフォーマンスする脳』(日経BP)の一部を再編集したものです。
生活習慣などで変えられる要因
これからご紹介していく予防の話は、『ランセット』誌が組織した「認知症委員会」という専門家グループの報告書が土台になっています。
ちまたには認知症予防に関する情報が溢れていますが、科学的根拠の確かなものは限られています。その中でランセット委員会の報告は、もっとも厳密に検討されたもののひとつとなっています。
委員会は数年ごとに1回、最新の知見をまとめて発表しています。
直近の2024年版では、認知症の発症に関わる「修飾可能な危険因子」というものが14個あげられました。「修飾可能」という言葉は耳慣れないかもしれません。これは、生活習慣の改善や治療、社会的な対策などによって、変えることのできる可能性がある要因という意味です。
そして委員会は、報告書の中でこう書いています。
「これら14の危険因子を減らすことができれば、認知症の約45%は、理論上、予防したり発症を遅らせたりできる可能性があります」
認知症リスクの半分近くは変えられる可能性がある
私は患者さんやそのご家族にこうお伝えしています。
「認知症のリスクの半分近くは、私たちの暮らしや社会の取り組みによって変えられる可能性があります」
半分近くという数字は、決して小さくありません。
ただし、ここでいう約45%は、14の危険因子を社会全体で減らすことができた場合に、認知症の発症をどの程度減らせるかを推計したものです(「人口寄与割合」と言います)。
つまり、その危険因子がなければ、どれくらいの割合の病気が防げそうかという意味で、一人ひとりが14項目すべてに注意すれば、その人の認知症リスクが一律に45%低下するという意味ではありません。
正確には、最大45%の症例が理論的には予防できたり、遅らせられたと推定できたことになります。
それでも、認知症の発症は運命だけで決まるものではなく、変えられる余地がかなり残されていることを示す、希望のある数字です。


