ここまでは「消費税を委託外注費に正しく上乗せして支払っている場合」の話。もしも、委託外注費に消費税が上乗せされていなければどうなるだろう。言い換えると、「税別300万円」ではなくて、「税込み300万円」の場合はどうなるか。
「300万÷1.05」の計算式から285万7143円の委託外注費が求められ、残りの14万2857円が消費税分となる。もちろん、この14万2857円は預かっていた消費税の分から控除できる。
さらに、消費税が8%にアップして税込みのままなら、「300万÷1.08」で委託外注費が277万7778円となる円に膨らむ。つまり、実質的な委託外注費を削減できるうえに、消費税の納税額を減らせ、委託を発注する企業にとってはダブルメリットになりかねないのだ。
発注者側が強い立場にあるのは世の常。2014年4月の8%への消費税アップの際に、「お宅への委託費はこれまでと同じ300万円。消費税も税込みのままで頼むよ」とゴリ押しされても、時として相手が呑まざるをえないことが予測される。
そうなると、発注者にとってのメリットは、そのまま委託先のデメリットに裏返しされる。委託外注費を下げられたうえに、増えた消費税の分をきっちり国に納めなくてはならない。これでは“泣きっ面に蜂”である。
また、そうしたケースでは、285万7143円から277万7778円への委託外注費の実質的な減額7万9365円分だけ、委託・外注で働いた人の手取り額も目減りする可能性がある。消費税という外的要因によって外注先や派遣社員などが冷遇される事態は許されない。その意味でも、消費税は正しく転嫁される必要がある。
(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)