派遣労働者保護の動きが高まっているが、彼らの生活は苦しくなる一方のようだ。将来を描けず、思い悩む彼らの声を拾っていく。
図を拡大
事業所規模別派遣労働者が就業している事業所数の割合

2008年秋のリーマン・ブラザーズの倒産が引き金となった、世界的な金融危機。日本にも多大な影響を及ぼし、経営不振に陥った企業は、大規模リストラに踏み切った。真っ先に対象となったのが派遣労働者たちだった。

「雇用の調整弁」として製造業で働く派遣契約者を中心に、いわゆる「派遣切り」によって多くの人が職や住まいを失った。08年末には日比谷公園に「年越し派遣村」が出現し、人々に衝撃を与えた。

今でこそ「派遣受難」 の時代だが、昔からそうだったわけではない。

「短大卒業後、寮のある会社で正社員として働いていたんですけど、1人暮らしもままならないほど給料が安かったんです。派遣のほうが、収入がよくなるので派遣で働くようになりました」

38歳の女性、藤田めぐみさん(仮名)は、1999年に派遣社員になったきっかけをこう語る。当時の時給は1800~1900円が主流、1日8時間労働で月20日勤務すれば約30万円の収入となる。20代半ばの事務職の女性で、これだけの収入を確保するのは困難だろう。しかも、残業した分も支払ってもらえる。

しかし、それが景気の悪化とともにみるみる下がっていき、今の派遣先での時給は1650円だという。

「どんどん目減りしていきました。交通費込みで1600円台はまだいいほう。昔に比べると随分変わりましたね」

と溜め息をつく藤田さん。同じく38歳の女性、中村千早さん(仮名)も、「確かに昔は断然、『派遣のほうがいいじゃん!』って感覚がありましたね」。

と、かつての様子を振り返る。中村さんは短大卒業時に就職氷河期に見舞われた。内定を得ることができず、社会人1年目から地元の広島で派遣として働くこととなった。当時は腰掛け程度の軽い気持ちだった。99年に上京し、派遣で働いた後にそのまま正社員として7年半在籍。その会社を退職してからは、再び派遣での勤務を続けている。