そんな中村さんは横浜市内で1人暮らし。派遣では別途交通費は支給されないことが多い。時給が下がれば、その分交通費を捻出するのが苦しくなる。

「以前働いていた会社は、1日7時間勤務でした。それで1カ月約3万円の定期代が自腹となるとかなり厳しいので、1日8時間以上働ける職場に変わることにしました。もう少しお金に余裕があれば、趣味を持ったり、友達と気軽に飲みにいったりすることもできるのですが……」

中村さんによると、横浜市内の時給相場は、都内と比べて100~200円は違う。需要も都内のほうが圧倒的に多いが、都内に住めば生活費がかさむ。だから中村さんは交通費を多めに負担してでも、都内での仕事を選ぶことにしている。

彼女たちは派遣先で長く働き、職場で実力を認められても、時給が上がることは滅多にない。人材派遣会社に登録し、そこから企業に派遣されていて、直接の雇用関係にあるのは人材派遣会社。時給の値上げを希望する場合、人材派遣会社に申し出なくてはいけない。中村さんは思い切ってかけあってみたことがある。

「『今、派遣業界は凄く厳しいんだから、そんなことを言ったところで、うちが切られるのがオチですよ』と言われ、値上げ交渉に応じてもらえませんでした」

人材派遣会社としても、得意先である派遣先企業の機嫌は損ねたくはない。もっと安い人材派遣会社に変えられてしまっては元も子もないからだ。

派遣先企業から人材派遣会社に「負担が増えてもいいから、時給を上げてやってくれないか」と申し出てもらえることもあるが、極めて稀なケースだ。

「契約は基本的に3カ月更新なのですが、大丈夫なはずと思いつつも、更新時期はいつも気になってしまいます」

と藤田さんが語るように、時給を上げてもらいたくても、契約更新のことが頭をよぎり、結局は何も言い出せないまま働き続けるしかないのだ。