契約終了から3カ月後、坂本氏は何とか新しい仕事に就くことができた。ただし、派遣契約で収入は約3割減。それまで自宅の家賃と実家の住宅ローンを両方支払っていたが、1人暮らしをやめ、実家に戻らざるをえなくなってしまった。
ようやく新たな職を見つけても、いつかまた切られるのではないかという不安は常につきまとう。
「同じような条件で働く同僚が何人かいます。なかには精神的に病んでしまい、会社に来なくなった人もいますね」
正社員であれば残業が一定時間を超えると、産業医によるカウンセリングを受けられるといったフォローがあるが、派遣には一切ない。あくまで自己責任だ。少ない人数で仕事をこなしているため、休みも確保しづらい。個人の負担は、精神的にも肉体的にも増す一方だ。
坂本氏は、システム部門を派遣の人材に頼る危うさも指摘する。
「景気が悪くなると、特に中小企業では情報システム部門は真っ先にコストダウンの対象になります。派遣や請負の技術者に任せきりだったのが、次々と入れ替わり、やがて辞めさせられてしまいます。引き継ぎが不十分で現場の正社員もシステムを把握できないようになり、大きなトラブルを起こす危険性も高まります」
坂本氏を含む現場の人間は、自らの雇用や将来、システムへの不安を抱えつつ、日々の仕事に忙殺されている。