しんどさは伝わらず、明確な治療法もない
更年期に伴う心身の不調には、他の病気にはない特有の困り事がいくつかあります。
更年期の困り事① 不調の原因がハッキリしない
一つ目の困り事は、自分の不調の原因がなかなかはっきりせずモヤモヤが募り、それが更年期障害だとわかったとしても喪失感を伴うこと。私が診察してきた更年期障害の患者さんも、原因不明の不調=不定愁訴に振り回され困って受診されるパターンが多いです。
除外診断や診断的治療を経て、ようやく更年期障害と診断が降りても「不調の原因が判明して良かった」とホッとすると同時に「やっぱり更年期か……」と喪失感を覚える方が少なくありません。
私の場合、同業者のドクターが経営する産婦人科クリニックで子宮のエコー検査を受け、平均よりも早めの49歳で閉経が判明しました。その直後に更年期障害の症状を自覚したのですが、予想外に早く閉経を迎えてしまい、「自分はもう若くないんだ……」と深い喪失感に苛まれました。
更年期の診断が降りない場合であっても「まだ更年期じゃないってことは、自分はまだ現役なんだ」とほんのり嬉しさを覚えるかもしれませんが、同時に「じゃあ、この不調の原因は何?」と不安が増幅すると思います。自分の不調の原因がわからないって、精神的に結構キツいのではないでしょうか。
更年期の困り事② マイナートラブルの集合体でしんどさが伝わりにくい
二つ目の困り事は、更年期に伴う不調の一つひとつは些細なマイナートラブルですが、それが集合体になるとQOLが下がること。そしてマイナートラブルの集合体ゆえ、そのしんどさが自分以外の人に伝わりにくいこと。
「胸が痛い」と家族に訴えれば「大丈夫!?」と心配されるけれど、何の脈絡もなく汗をかいたり「手が痛い」「めまいがする」などと訴えたところで、それぞれの症状は大したことがないので「お母さん、また言ってるよ」と取り合ってもらえません。本人はQOLが低下し、息も絶え絶えなのに、そのしんどさが伝わらず、負荷が何倍にもなります。
更年期の困り事③ 特効薬や明確な治療法がない
三つ目の困り事は、自分の不調の原因が更年期だとわかっても「こうすれば必ず治ります!」といった特効薬や明確な治療法がないこと。更年期障害には女性はパッチやジェル、男性は注射や軟膏や飲み薬で性ホルモンを補充するホルモン補充療法があり、症状や体質によっては漢方薬服用も有効ですが、全員に劇的に効くわけではありません。
私の患者さんの中にはホルモン補充療法でQOLが上がりかなり楽になったという方もいますが、私自身は正直「しないよりはマシかな……」程度の効き目でした。
更年期の小さな不調の積み重ねでQOLはダダ下がり、でも家族に不調を訴えても心配されず、ホルモン補充療法も劇的には効かない。静かに、しかし確実に、心身ともに削られていくのを、私自身痛感しています。これこそが、更年期特有のしんどさの正体です。
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