高市政権が関係改善に動き始めた矢先に…
道新記者の逮捕は、高市政権がロシアとの関係改善に動き始めたことを尻目に強行された点でも衝撃だった。
欧州連合(EU)はロシアとの文化交流を停止しているが、日本政府は対露制裁を強化しながら、「政治と文化は別」として数年前から文化交流を再開。今年は規模を拡大し、「ロシア文化フェスティバル」が日本各地で開催中だ。
日本側は今年からロシアとの学術交流も再開。ロシアへの若手研究者派遣事業を復活させた。8月には大学生の短期訪問団をサンクトペテルブルクに派遣。5月には、経産省通商政策局長や外務省幹部が訪露し、日ロ経済交流を協議した。
高市政権の対露柔軟外交の背景には第一に、トランプ政権の対露融和外交があろう。日本外交は戦後、対米追随が顕著で、トランプ政権のロシア接近を無視できない。
第二に、日中関係悪化の長期化がある。中露の接近は日本の安全保障にとって得策ではない。
第三に、イラン戦争に伴うホルムズ海峡危機で石油危機が広がったことがある。石油危機を受けて、東南アジア各国はロシアに接近したが、日本もサハリン産液化天然ガス(LNG)を比較的安値で長期購入しており、エネルギー大国ロシアを無視できない。
記者逮捕の裏で行われた択捉島の爆撃訓練
だが、ロシア側はこうした高市政権のナイーブなアプローチを無視し、対日強硬路線に突っ走った。
プーチン大統領は8月13日、北方領土の択捉島を初めて訪問。その前日、「われわれは日本との協力を進める用意があるが、日本側は経済制裁を続け、新しい軍事ドクトリンでロシアを脅威の源と位置付けた」と述べ、関係悪化の責任を日本に押し付けた。
訪問直後、中露の駐日大使が日本の歴史認識や軍事力増強を批判する共同声明を発表。中露の連携を印象付けた。
10月には、中国北東部、黒竜江省の地元政府代表団が択捉島を訪問し、経済協力を討議した。ロシア軍は10月13日から、道新記者の逮捕と並行して択捉島で軍の爆撃訓練を実施した。
道新記者の逮捕には、先に挙げた2つの報復に加え、日本のウクライナ支援をけん制する狙いもあろう。日本のウクライナ支援は米、独、英、仏に次ぐ世界5位の規模だ。日本に圧力をかけることで、ウクライナ支援を挫折させようとした。
また、ザハロワ報道官は日本側に「対露政策の修正」を要求しており、制裁緩和を狙う意図もあるようだ。
ロシアは日本に対して記者拘束や北方領土の軍事演習などで揺さぶりをかけ、EU各国にはドローンによる領空侵犯や破壊工作などのハイブリッド攻撃を展開している。
戦時下のプーチン政権はトランプ政権の懐柔や中国との連携で外交に自信を深めており、日本とEUに圧力を加えることで、米欧、日米の分断を図りつつあるようだ。
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