正規の記者ビザで取材していた
逮捕された北海道新聞の記者は、正規の記者ビザで取材していた。スパイ活動をするはずもなく、明らかに捏造だが、プーチン政権はメディアを総動員し、日本の反露活動や情報工作としてプレーアップしている。
一方で、ロシアの独立系メディアはFSBの強引な逮捕や捜査に批判的だ。
独立系の「重要な歴史」は、FSBが動画で示した約2万円の「協力の対価」とする文書は、「タクシーの領収書にすぎない」とするロシア人専門家の分析を伝えた。
拘束された記者についても、「彼は2014年にサンクトペテルブルクでロシア語を学んだ。ロシア文学に関心を持ち、学生たちと積極的に交流した。ロシアの映画やバレエが好きだった」などとする知人の好意的な証言を伝えた。
独立系メディア「メドゥーザ」も「彼は下院選挙やロシアと北朝鮮の関係について精力的に取材していた。ウラジオストクなど沿海地方を訪れ、極東の生活や日露友好事業も取材した」とし、スパイ説を暗に否定した。
記者はサハリン発の一連の記事で、北海道に隣接するロシア極東の動向を鋭くも温かい視線で描いており、有能で熱心な人物と思われる。
ロシアでは現在、約30人の記者がスパイ罪や反戦運動を煽った罰で拘束されており、海外に拠点を移した独立系メディアは道新記者に同情的だ。
米紙記者は懲役16年を言い渡された
木原稔官房長官は14日、ロシア側に情報提供や人道的配慮、公正な取り扱いを申し入れたと述べた。外務省も同日、駐日ロシア大使を呼び、日本側への説明がないまま一方的に拘束と発表を行ったことに抗議した。日本側が「邦人保護」に重点を置き、やや弱腰な姿勢が気になる。
今回の逮捕劇はロシアでの記者の取材活動を束縛し、在留邦人のビジネス活動にも打撃を与えるリスクがある。
従来、日本人の記者や外交官がスパイ容疑で拘束されても、すぐに国外追放され、一件落着した。今回は解決が複雑で、長期化しそうだ。
同様の例としては、2023年3月、ロシアの軍需産業をウラル地方で取材中にスパイ容疑で逮捕された米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのエバン・ゲルシュコビッチ記者の事件と共通点が多い。
当時はバイデン米政権時代で、ウクライナ侵攻後米露関係は極度に悪化。同記者は道新記者同様、モスクワの未決囚拘置所のレフォルトボ監獄に収容され、裁判で有罪になり、16年の刑を言い渡された。
同記者は500日近くロシア国内の刑務所に収容され、2024年8月、米欧とロシア間で行われた大規模な囚人交換によって釈放された。最近回想録を出版し、逮捕から釈放の経緯を明かした。
日露間では米露間のような囚人交換の前例がなく、情報機関トップとの対話チャンネルもないだけに、解放工作は難航しそうだ。外交筋は、米露間、米欧間で将来実施される囚人交換に便乗するしかないかもしれないと指摘した。

