防犯カメラに映っていた「犯行現場」
実際の在庫、590万円。
差額、50万円。
3カ月前の棚卸しでは、差は10万円程度でした。それが今回は50万円。その月の利益が消えてしまうほどの金額です。
防犯カメラを確認すると、新しく採用した中国人スタッフの一人が、勤務日ではない日に店へ出入りしていました。入店した時と帰る時で、バッグの膨らみ方が違う。調べるうちに、もう一人も商品を持ち出していたことが分かりました。
乾電池、携帯電話用充電器、カードゲーム、化粧品。小さく、転売しやすい商品でした。2人に辞めてもらったあとも、坂本さんの不信感は消えませんでした。スタッフがバックルームへ入るたび、バッグを動かすたびに、「大丈夫か」と考えてしまう。周囲のスタッフも互いを疑い、会話が減っていきました。
そこへ、別の不正が重なります。今度はレジの現金が合わなくなったのです。調べると、返品処理を装って現金を抜いていました。やっていたのは、坂本さんが真面目だと信じていた、日本人の学生アルバイトでした。
悪いことをする人間は、どこにでもいる。
問題は、不正をしようと思えばできてしまう店の仕組みを、自分が放置していたことだった。
「外国人だから悪さをする」は間違い
最初の事件だけを見れば、「外国人を採用したのが間違いだった」と考えてしまったかもしれません。しかし、日本人の学生も不正をしていた。外国人だから疑う。日本人だから安心する。その見方では、不正を見抜くことも、真面目に働く人を正当に評価することもできません。
盗んだ本人の責任を問うと同時に、経営者には、不正を防ぎ、気づける仕組みを整える仕事がありました。
「誰が来て、誰が帰ったか」を全員が分かる店に坂本さんは、店のルールを一から見直しました。
出退勤時の手荷物確認、欠勤時の連絡、レジ精算の手順、作業の分担、商品管理。それまで曖昧にしていたことを、文字にしていきました。
特に徹底したのは、出退勤時の挨拶です。
店に入った時、帰る時には、その場にいる全員に聞こえる声で挨拶する。接客のための練習というだけではありません。誰が来て、誰が帰ったのかを、互いに把握できるようにするためです。
ルールは、働く人を縛るためだけのものではない。真面目に働く人を守るものでもあった。
私は、この点が大切だと考えています。不正が起きた職場では、何もしていない人まで疑われます。経営者が不安から全員の行動を監視するようになれば、真面目に働いているスタッフも居心地が悪くなるでしょう。

