高齢者ほど注意が必要な理由
破傷風は、現代の日本では大幅に減っています。それでも、なくなったわけではありません。2006~2011年には全国で年間平均111例が報告され、患者さんの年齢中央値は71歳でした。40歳以上が9割以上を占めています(※3)。感染者に高齢者が多いのはなぜでしょうか。
じつは日本において、破傷風とジフテリアと百日咳を防ぐための「DPTワクチン」が定期接種になったのは1968年。そのため高齢者の中には、子どものころに十分な基礎免疫を獲得していない人がいてリスクが高いのです。
では、1968年以降に生まれた人なら安心でしょうか。現在の定期接種では、乳幼児期に破傷風を含むワクチンを複数回接種し、11~12歳に追加接種します。しかし、その後は、破傷風ワクチンの追加接種を受けない人が多いでしょう。
破傷風ワクチンによる免疫は、接種から10年ほどかけて徐々に低下していくと考えられていて、この10年が追加接種の目安とされています。土に触れてケガをすることのある農業や土木業、災害の救助や復旧に携わる人などは、破傷風ワクチンを追加接種することも多いでしょう。でも、すべての成人が今すぐ破傷風ワクチンを追加接種しなければならないとまではいえません。
※3 IDWR 2012年第44号<速報>東日本大震災に関連した破傷風(2006~2011年における全国および被災三県の発生状況)
ケガをしてからでもワクチンは有効
これまで述べたように破傷風はとても重い病気ですが、適切な処置によって発症を予防することができます。
水害時に限らず、ケガをした場合は、傷口についた泥や異物を取り除き、水道水などの清潔な水で十分に洗い流しましょう。小さな傷でも、水害などで泥水や土に触れた場合は、医療機関の受診を検討してください。傷が深い場合は外科へ、それ以外は内科や整形外科でも大丈夫でしょう。とくに最後に破傷風ワクチンを接種してから5年以上がたっている人、接種歴がわからない人は、早めの受診をおすすめします。
先に述べたように、破傷風はケガをしてから発症するまでに数日から数週間かかります。「曝露後予防」といって、この間にワクチンを接種すれば、発症を防げる可能性があります。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の基準では、必要な回数の接種を済ませている人でも、傷口が土や泥で汚れた場合は、最後のワクチン接種から5年以上たっていると追加接種がすすめられます。きれいで小さな傷の場合は、最後のワクチン接種から10年以上が目安です(※4)。
ワクチンの接種歴がわからない人や、必要な回数の接種を受けていない人が傷口を汚染された場合には、ワクチンに加えて破傷風免疫グロブリンを使うこともあります。ワクチンを接種してもすぐに十分な抗体ができるわけではないので、免疫グロブリンによって抗体を補うのです。
最後に、破傷風は小さな傷からでも起こり、重症になれば命にかかわることもあります。一方で、できれば傷を防ぎ、傷ができたら適切に処置し、必要に応じて発症前にワクチンを接種することで予防できる病気です。水害のときには、冠水した水そのものだけではなく、そこで負った傷にも十分に注意しましょう。
※4 Clinical Guidance for Wound Management to Prevent Tetanus
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