短距離弾道ミサイル一発で4億円超
ミサイル一発を撃つのには多額の費用がかかる。アメリカのシンクタンク・ランド研究所の上級研究員が2022年に米政府系ラジオ局の取材で語ったところによれば、短距離弾道ミサイルの発射に際しては1発当たり約4億5000万~7億5000万円、中距離弾道ミサイルは約15億~22億5000万円、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は約30億~45億円かかるとされる(1ドル150円換算)。
なお、ミサイル関連施設や発射台、人員などの費用は十分に含まれておらず、実際の製造費用も明らかになっていない。そのため、個々の発射にかかった正確な費用は不明である。
その金は、いったいどこから捻出されているのか。北朝鮮は長らく経済的な苦境にあえぎ、国民の多くが貧困に苦しんできた。2025年3月に国連の人権理事会に提出された報告書によれば、2020〜2022年の3年間で平均45.5%の国民が栄養不良状態にあったという。数にして約1180万人だ。
だが一方で近年、同国の“経済成長”は著しい。韓国銀行の発表する「2025年北朝鮮経済成長率推計結果」によれば、2025年の北朝鮮の実質GDPは38兆2640億ウォン(約4.5兆円/1ウォン約0.118円換算)。前年から3.5%増加しており、2023年から3年連続で3%を超えている。
ロシアへの軍事協力で2.1兆円を稼ぎ出す
この成長の原資となっているのが、ロシアによるウクライナ侵攻で生まれた特需だ。韓国の政府系シンクタンク・国家安保戦略研究院は、2023年8月~2025年12月にかけて北朝鮮がロシアへの武器販売と兵力派遣で得た収入は最大144億ドル(約2兆1600億円)に上ると推計する。
金正恩朝鮮労働党総書記は、2026年からの国防5カ年計画でミサイルの生産能力を従来の2.5倍へ拡大する方針を示している。ロシアへの軍事協力で得た潤沢な資金を、ミサイル増強に費やすという推測は十分可能だろう。
北朝鮮にとってミサイル発射は、核・ミサイル戦力を実際に使える状態へ近づけるための活動でもある。金正恩政権はその2つを安全保障の中心に据えている。
北朝鮮指導部にとって核兵器は、米国からの軍事攻撃を抑止し、政権を維持するために欠くことができない。そしてその核兵器を相手国まで運ぶ手段として、弾道ミサイルも必要だ。世界中から経済制裁を受けても核・ミサイルの開発をやめない最大の理由はここにある。

