「病院に行けば安心」という思考停止

もちろんそうは言えないから、点滴のルートを取り、酸素マスクや、場合によっては人工呼吸器を装着するなどして、治療をはじめる。

治療のために検査が必要だから、血液検査をして、X線検査をして、場合によっては超音波診断やCTスキャンもして、その度に針を刺したり、管を入れたり、冷たい台の上に乗せたりして、患者に苦痛を与える。

いくら高齢でも、家で倒れていたり、肺炎で呼吸が荒くなっていたりすれば、救急車を呼びたくなる家族の気持ちはわかる。しかし、救急車を呼べばどうなるかまで考えている人は少ないだろう。病院に行けば安心、専門家に任せれば大丈夫というような、思考停止に陥っている人が多いのではないか。

久坂部羊『欲張らない死に方 賢く老いるヒント』(ちくま新書)
久坂部羊『欲張らない死に方 賢く老いるヒント』(ちくま新書)

病院は必ずしも安全ではないし、医者も万能ではない。しかし、医療者はそれを声を大にして言わない、あるいは言えない。迂闊に言うと、自己否定にもつながり、世間の批判を浴びるからだ。

救急車を呼ばずに、高齢者を家で死なせるのは、かなり勇気がいることだろう。そのためには、救急車を呼んで病院に運ぶとどんなことをされるのか、それはどれくらい効果があるのか、どんな弊害があるのかを、あらかじめ知っておくことが大事になる。

病院に運べば何とかなる、きっと助かる等、丸投げの希望的観測に陥っていると、後悔することになる。

そんなとき、頼りになるのは、在宅医療の医者やかかりつけ医だろう。ふだんからどう最期を迎えるかを、勇気を持って専門家と話し合っておくことが重要だ。

検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

【関連記事】
祖父は13年、父は1年半寝たきりだった…「老いに抗うほど不幸になる」71歳医師が考える"幸せな老後"の条件
日本人に突出して多いのはA型だが韓国は全く異なるのはなぜか…"血液型に刻まれた人類の進化と適応の歴史"
台所を見れば認知症の予兆がわかる…介護のプロが断言「物忘れ」よりも早く気づける"食卓の異変"
「家の近所を歩く」よりずっと効果的…精神科医「ウォーキング効果を最大限に引き出す」とっておきの場所
パカッと開けて週に1、2個食べるだけ…がん専門医が勧める「大腸がんを予防するオメガ脂肪酸たっぷり食品」