「ありがとう」とよく言う人の脳のクセ
感謝と幸福感の関係について、心理学者ロバート・エモンズとマイケル・マッカロウの研究が重要な示唆を与えています。
この研究では、毎週「感謝できることを5つ書き出す」グループと「不満に思うことを書き出す」グループを比較したところ、感謝グループの方が幸福感が高く、楽観性も向上し、運動習慣など健康行動も改善したことが示されています。
感謝を表現する習慣は、感情の安定という「副次効果」だけでなく、生活全体のウェルビーイングを高める効果があるのです。
「ありがとう」を言うためには、相手の行動の中に「良い点」を見つける必要があります。つまり、「ありがとう」を言う習慣がある人は、無意識のうちに周囲のポジティブな要素を探索するモードになっているのです。この「ポジティブ探索モード」が、ネガティブな感情の発生頻度そのものを下げていました。
脳の注意システムは「探索対象」を設定すると、その対象を視野の中で優先的に拾います。「ありがとう」を言う前提があると、感謝に値する出来事を拾うフィルターが常時稼働している状態になります。
コストなしで効果絶大な感情マネジメント
弊社が観察した5%社員の感謝の特徴は、「大きなことへの感謝」ではなく「小さなことへの感謝」でした。昇進や受注などの大きな出来事には誰でも感謝するでしょう。しかし5%社員は、「コーヒーがおいしかった」「電車が時間通りに来た」「部下が笑顔で挨拶してくれた」という日常の小さなことへの感謝を口にしていました。
大きな感謝は年に数回しか発生しません。小さな感謝は1日に何十件も発生します。発生頻度の高い感謝を拾うフィルターを持つほど、1日の中で「ポジティブな入力」を受ける回数が増えます。
9社の協力を得た再現実験では、一般社員に「1日15回の『ありがとう』を目標にする」を4週間実践してもらいました。結果、対象者の67%が「気分が安定するようになった」と回答し、「人間関係が改善した」と回答した人も63%にのぼりました。
「ありがとう」は語彙の選択コストがほぼゼロです。長い文章を考える必要も、フォーマットを覚える必要もない。導入コストが低く、効果の蓄積が速い。費用対効果が極端に高い感情マネジメントの手段です。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


