米国の態度は「一貫」している

国際社会の理想論としてICCの正当性を語ることは容易だが、実際に自国の指導者が訴追対象になり得る立場に置かれたとき、それを甘んじて受け入れる主権国家がどれだけあるだろうか。まして、自国が加盟もしていない組織による制裁を受け入れる正当性はどこにあるのか。米国はその問いに対して、一貫して「否」と答え続けてきた国なのである。米国の主張は国家主権の尊重という「法の支配」の大原則に沿ったものである。

さらに、パレスチナがICCに刑事管轄権を委ねる根拠は、2015年のローマ規程加盟に求められている。実際には、ICCは2021年の予審裁判部決定で、ローマ規程上の「領域」該当性は国連総会決議上の地位で足りるとして、パレスチナの管轄権付与を特例的に認めたものだ。

オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)
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しかし、国連総会決議でオブザーバー国家の地位を得たことと、明確な国境・実効支配・排他的統治機構という国家性の要件を満たすことは別問題であり、国際法上その完全な国家性はなお争いがある。

ICCの主張に法的正当性はあるのか

加えて、オスロ合意では、パレスチナ自治政府がイスラエル国民に対する刑事管轄権を持たないことが当事者間で明記されている。合意によって否定された権限を、第三者機関への加盟という手続きのみで事後的に獲得できるとする解釈は、当事者間合意の実効性を軽視することになる。

国家性が未確定の主体が、条約上の第三者に訴追権を移転できるとすれば、国家承認という国際法の基本枠組み自体が空洞化しかねない。したがって、パレスチナを起点とするICCの管轄権主張の法的正当性は疑わしい。

また、2020年のICC予審裁判部によるパレスチナ管轄権審理において、意見書(アミカス・キュリエ)を提出しパレスチナ側の管轄権を積極的に支持したのは、アルハック(Al-Haq)、アルメザン人権センター(Al Mezan)、パレスチナ人権センター(PCHR)といったパレスチナ系人権NGO、およびヒューマン・ライツ・ウォッチなど国際人権団体が中心であった。

このうちアルハックを含む複数の団体は、2021年にイスラエル政府からPFLP(パレスチナ解放人民戦線、イスラエル・米国・EUがテロ組織に指定)との人的つながりを理由に「テロ関連団体」に指定されている。