絵柄が最高に良かった「天幕」
「ヤニすう」も「かけ恋」も、「内向性やその繊細な心理的成長の物語、というのはもはや日本アニメのお家芸になりつつある」というレビューどおり、この微細なアニメ描写は世界に通じる。むしろ「話が(すぐには)展開しないスローテンポな人間関係構築」がリアリティをもち、英語ユーザーにも刺さっている。
最後に18位の『天幕のジャードゥーガル』(天幕)を取り上げたい。
本来、20位前後の作品を本連載でとりあげることはめったにない。だがそうしたトップ作品にばかり目を向けていると、宝石のように輝く美しき作品を取りこぼすだろう。
このモンゴル帝国が中央アジア、インド・中東・東欧・ロシアを征服しているコアな歴史ストーリーを描いた「天幕」こそ、私自身が今年一番ハマったアニメである。
私自身の感想と一致したコメントを紹介しよう。
「時折、人生観や世界観を根底から変えてしまうようなアニメに出会うことがある。昨年は私にとって『Orb(邦題:『チ。 ―地球の運動について―』)』だったが、今年は『ジャードゥーガル』だ。これは最高レベルの芸術性であり、私がこれまで見てきた中でも最も情熱的に作られた作品の一つだ」
天幕はストーリーだけでなく絵柄が最高にいいのだ。
あるファンは「第1話の半分ほど見たところで、キャラクターや世界観が生き生きと描かれていることに気づき、すっかり魅了されてしまった。表情や身振り手振りで、幅広い感情が容易に伝わる。色鮮やかな背景が画面いっぱいに広がり、まるで絵本から飛び出してきたかのようだ」と書いた。
作者の惜しみない愛情で溢れている
キャラクターはかなりデフォルメが強く、子供向け絵本のようだ。だが内容は、街を征服して都市の数十万人の人口の3分の2を大虐殺してしまうような恐るべき時代をそのままドキュメンタリーのように描く。この画風は逆に本作のはなった異彩を正しく受け止めるものになっているようにすら感じられる。
本作品に強い愛情を覚えるのは、作家自身のこの文化圏に対する惜しみない愛情が随所で感じられるからだろう。それは海外ファンも同様のようだ。
「アニメーションと中央アジアの文化・歴史への、まさにラブレターと言える作品だ。モンゴルやアジアの草原地帯の生活や文化、中世ペルシャ文化、イスラムの学問を、歴史的に最も正確に描写するために、一切の費用を惜しまなかった」「都市のレイアウトや当時の構造は完璧に描写されている。イスラム教徒の生活様式はステレオタイプに陥ることなく、本物らしく美しく描かれている。モンゴル人についても同様だ。これほど質の高いアニメに最後に出会ったのはいつだっただろうか」
想像力の美しさを際立たせるのはむしろ実写よりもすべてを作りこんでいるアニメなのかもしれない。「ラブレター」という表現はまさに正鵠を得ており、我々と時代も地域もまったく異なる話が、かくも感動を呼び起こせるのかと驚いた。
ハリウッドが描いたとある時代の日本人の姿に我々が感動してしまうように、当人たち以上に客観的かつ愛情をもった目線で、日本のアニメは「他人のストーリー」を美しく理解可能で愛情深く慈しむものに変えてしまう力を持っている。
この残酷で美しい世界を奴隷として必死に生きたファーティマは、なにせ実在した人物であり、チンギス・ハーンの子孫をめぐる政治劇はそのほとんどが「史実」なのだから。
こうした作品が生まれ続けていることそのものに深く感謝したい。
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