それでもキャラクターは魅力的

理由は明白、主人公・ルーデウスは能力的な無双チートだけでなく、童貞引きこもりで死んだ前世をそのまま引きずった人格なので赤ん坊でありながら女性の胸にかぶりついたり下着に興奮したりする。成長しても平然と3人の妻を迎え、果てはその従順さにつけこんで複数プレイに持ち込むなど(アニメでは直接的な性描写そのものは避けられているが)なかなかに倫理観が問われる部分が多い。

無職転生III
(C)理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生III」製作委員会

日本人でさえ拒否感が強いこうしたシーンは、より倫理感が強くジェンダー問題にも感度が高い欧米ユーザーにはとても受け入れがたいのだろう。

批判コメントの多くはこの部分のみに集中しているといっていい。

「主人公ルーデウスの変態的な性格のせいで、これほど多くの批判を受けているのは残念だ。」「カニエ・ウェストが好きなら、おそらく我慢できるでしょう。そして、女性でなければ。世界中の女性にとっては見るのが辛いので、お勧めしません。」などなど。

結局「主人公を好きになれない」の一点に尽きる。

わりと倫理観の許容性が高い私自身も、途中でインポテンツになった主人公が必死にその改善法を探る、という話が10話以上繰り返されたときにはそろそろ見るのをやめようかと迷うほどであった。

だが登場人物には魅力的なキャラクター性があり、丹念に冒険をしながら実力をつけていく様子はいわゆる「異世界転生のチート物語」とは違って好感をもてたし、結局は一気見してしまう魅力にあふれている。

中国では途中で配信停止に

これだけロリコン主人公がリスク視されながらも、Membersも激増し、Scoreも全体では高い、という点が本作の秀逸さを物語っている。欠陥多き主人公だからこそ、よりその成長物語が映え、共感できる人物ということもできる。

アニメそのものへの評価が高い。

制作を手掛けるスタジオバインドは、そもそも『無職転生』をアニメ化するために設立されたスタジオである。この大作を長期的に妥協無くつくるには専用スタジオが必要と、制作会社のWHITE FOXとアニメプロデュース会社のEGG FIRMが共同出資して2018年に設立したのだ。

無職転生III
(C)理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生III」製作委員会

その覚悟は英語ユーザーにも伝わっており、「ライトノベルがどれほど優れていれば、そのアニメ化のためだけにスタジオが設立されるのでしょうか? まさに『異世界転生のゴッドファーザー』である『無職転生』がそれで、スタジオバインドはこのために作られ、作画、キャラクターデザイン、アニメーション、映画並みの演出と振り付けを見れば、このスタジオの創造力とエネルギーのすべてが注ぎ込まれていることは明らかです」と評価をされている。

これほど明確な「穴」がある作品にもかかわらず、またコンプライアンスにより厳しい英語ユーザーをしてもなお、そのキャラクター描写やストーリー、アニメ作品としては「十分に高評価で受け止められている」という点で、ある意味新しい金字塔を築き上げた作品ともいえる。

今や飽和状態にある異世界ジャンルの波を巻き起こした「最初」の作品であり、「間違いなく最高の異世界アニメの一つ」である。

ちなみに中国では配信されていない。2021年1月に中国の動画共有サービスBilibili(ビリビリ)が独占配信権を獲得したが、作中の“不道徳性”が抵触し、ボイコット騒動にまで発展したその結果か、4話あたりで突如配信を停止している。