人間とAIの役割を見直す
純粋に論理学の問題として考えると、この答えが誤りだとはいえない。しかし、数学の問題の答えとして不適切であることは、間違いない。そのような常識的判断が、当時のChatGPTにはできなかったのである。
ところがいまでは、生成AIは、共通テストが測定しようとしている「学力」において、人間を凌駕する段階に到達した。
ここで重要なのは、「AIが人間の知能をあらゆる面で超えた」わけではなく、「共通テストが測っている能力の範囲内では、勝負がついた」ということである。
だから、必要とされるのは、知的作業における人間とAIの役割分担を見直すことだ。
共通テストで測定される「能力」とは
共通テストで測定されるのは、正解が一義的に定まる問題を、限られた時間内に正確に処理する能力である。具体的には、暗記力、既存の解法を適用する能力、計算や読解のスピードと正確性などだ。
これらは長年にわたって、「人間が知的作業を行なうために不可欠な能力」であり、また、「努力と訓練によって人間が伸ばすことのできる能力」であると考えられてきた。学校教育や入学試験は、こうした能力を体系的に鍛え、測定する制度として設計されてきたのである。
しかし、生成AIの登場によって、これらの能力の多くは、少なくとも一定の水準までは、すでにAIが人間を大きく上回る効率と正確性で実行できることが明らかになった。AIは疲れることなく、膨大な知識と解法を瞬時に呼び出すことができるからだ。
その結果、共通テストが測ろうとしてきた能力の中核部分は、もはや人間がAIと競争しうる対象ではなくなりつつある。

