※本稿は、相良奈美香『行動経済学が証明する最高の勉強法 無理なく、続けられる自分になる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「損したくない」気持ちは捨てよう
「せっかく勉強するなら、仕事に直結することがしたい」
「一番使いやすくて、確実に成績が上がるテキストを買おう」
「効率の悪い勉強法に時間をかけるのはもったいない」
勉強をしようと決意した直後、みなさんはこんなふうに思ったのではないでしょうか。
「できれば損をしたくない」と思う気持ちは当然です。これは勉強に限ったことではなく、たとえば家電の購入や、観る映画を選ぶときなどにも感じるものでしょう。安くて使いやすい家電が良いに決まっているし、おもしろくて満足できる映画を観たいですよね。
実は、お金でも時間でも、人は「なにかを得る喜び」よりも「今あるものを失う痛み」のほうを約2倍も強く感じます。行動経済学では、これを「損失回避性」と言います。
だから、お金や時間を無駄にしたくない、せっかくなら確実な成果が欲しい、絶対に失敗したくないと頑なになるのです。損失回避性はだれにでもある傾向ですが、もし、このクセについて自覚がないまま判断を重ねていると、もっと大きな損に繋がってしまう可能性もあるのです。
選択肢が多すぎて脳がパンクする
たとえば、「英語の勉強を始める」と決意したとしましょう。あなたは、まずは手軽にスマホアプリを使って勉強を始めようと考えました。アプリストアを見てみると、多数の英語学習用アプリがヒットします。英単語を覚えるアプリ、発音を練習できるアプリ、TOEIC対策に特化したアプリ。内容も多様ですし、デザインや価格もバラバラです。
あなたは、「せっかくならより英語力が上がるアプリがいいな」と思ったので、口コミをチェックすることにしました。アプリストアのレビューだけでなく、ソーシャルメディアやブログなども使って検索します。
「ゲーム感覚で進められて楽しい」
「広告が多すぎて全然集中できない」
「評価が高いから期待してたけど、結局物足りなかった」
「もっと早く出会いたかった! TOEICのスコアが100点上がりました」
意見は実に多様で大量です。どの声を信じればいいのか……。
結局、かなりの時間を費やしたにもかかわらず、ひとつに絞ることができずにアプリのダウンロード自体を諦めてしまいました。これは、アプリだけではなく、テキスト選びでもスクール選びでも、頻繁に起きている光景でしょう。
デジタルプラットフォームが発達した現代は、過剰なまでに選択肢が多い環境がデフォルトです。そのせいで、あれこれと比較検討するうちに脳のエネルギーを使い果たしてしまい、最終的になにも選べなくなってしまう。行動経済学では、この状況を「選択肢オーバーロード」と呼びます。

