「綿密な勉強計画」は立ててはいけない
本稿のテーマは「勉強法」。ですから、ベストな学習計画のコツがわかるかも、と期待して読み進めている方もいらっしゃるかもしれません。たとえば、合格を起点とした逆算思考の計画術、スキマ時間を最大化するスケジューリング術、短期決戦で試験に合格できる学習計画の目安。そんな必勝パターンがあるなら、ぜひ知りたいですよね。実際、資格試験や語学学習などの書籍を開くと、たいてい、計画の立て方についてのアドバイスが掲載されています。
ですが、ご期待に添えずごめんなさい。私は、「まず細かすぎる計画を立てる」ことを推奨しません。
なぜなら人は、計画を立てるだけで満足してしまいがちだから。ジムに入会して、おしゃれなウェアを買い揃え、いつどのくらいの頻度で通うか、計画を立てただけで満足して、結局全然通わなかった、なんて経験に覚えはありませんか? 細かく立てた計画表も、色とりどりのウェアも、早々に無用の長物になりかねません。
しかも、計画を立てる行為には「計画の誤謬」という落とし穴もあるんです。
「計画の誤謬」とは、行動経済学で、リスクや障害を十分に考慮せず、必要な時間や予算を甘く見積もってしまう、非合理な判断を指します。たとえば旅行先で「朝からあの美術館に行って、このレストランでランチを食べて、ここのお店で買いものをして、買いものが終わったらあのカフェでパンケーキを食べて」と計画を立てたのに、美術館もレストランも大混雑で計画がまる潰れになる、というような状況ですね。
人間にはリスクを低く見積もるクセがある
なぜそんな見通しの甘い判断をしてしまうのか。
その背景にあるのが、「楽観バイアス」です。これは、無意識にリスクを低く見積もってしまう思考のクセのこと。「自分だけは大丈夫」「今回こそは上手くいくはずだ」と思ってしまった経験がだれにでもあるはず。それが、まさに楽観バイアスです。ひとつ、興味深い心理学の実験を紹介しましょう。心理学者のロジャー・ビューラー氏らが行った実験です。
学生たちに「論文の完成にかかる日数」を予想してもらったところ、「通常通りスムーズに進めば終わる」と予測する現実的な日数で平均33.9日、「最悪の事態」を想定して予測した日数で平均48.6日というデータが出ました。
しかし、実際の論文完成までにかかった日数の平均は、なんと55.5日。ほとんどの学生は、現実的な予測どころか「最悪のシナリオ」すら守れなかったわけですね。

