ビールメーカー大手4社への信頼が揺らいでいる。ビールの値上げ幅などを事前に示し合わせるカルテルを結んだ疑いがあるとして、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いで強制調査に入った。なぜ消費者軽視の“背信”は行われたのか。ジャーナリストの永井隆さんがレポートする――。
写真提供=共同通信社
段ボールを運ぶ担当者ら ビール価格一覧表共有か  ビール大手の価格カルテル疑惑で、関係先として捜索した業界団体「ビール酒造組合」から段ボールを運び出す公正取引委員会の担当者ら=8日未明、東京都中央区

カルテルを行った大手ビール4社の事情

「競争のないところに、成長はない。兄弟でも競争はある」

2024年末に94歳で急逝した鈴木修スズキ元会長の言葉である。

鈴木氏は1978年、経営危機に直面していたスズキ(当時は鈴木自動車工業)第4代社長に就き、2021年に相談役に退くまでに、浜松の地方企業だった同社を世界企業へと引き上げた経営者だった。

ビール類の出荷価格でカルテルを結んだとして、公正取引委員会は大手ビール4社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで強制調査(犯則調査)を行った。

クルマもビール類も激しい競争に晒されている業界だと、広く知られている。ところが、ビール類業界は水面下で、競争を制限する行為を繰り返してきた疑いが、もたれているのだ。卸向けの出荷価格について、値上げ幅などを4社は事前に調整していたと見られている。

事実だとすれば、「競争のないところ」には成長は見込めないどころか、消費者に対する裏切り行為にもつながる。

競争が阻害されれば、業界は自分たち本位で、内向きになっていく。ステークホルダー(利害関係者)であるはずの消費者、流通や料飲店など取引先よりも、自分たちの立場や存在が優先されてしまう。

なぜ、アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールの4社は、公取委から強制調査を受けるような事態に陥ってしまったのか。