縮小するビール市場の中で

ビール類の最盛期は、ダイエーショックがあった1994年。出荷数量は5億7321万5955箱(1箱は大瓶20本=12.66リットル)。これが、2025年の販売数量は推計で3億1186万箱に減る。94年を100%とすると25年は約54%。32年間で市場は最盛期の45%以上も縮小してしまった計算だ。しかも、26年上半期(1月~6月)も前年同期比3%減だった。

2001年にアサヒはキリンを抜いてシェアトップに立つが、90年代後半からリベート(販売奨励金)を使った熾烈な商戦が勃発していた。リベートは乱売の原資として使われた。

02年にアサヒは発泡酒の値下げを断行し、3社も追随する。前年にトップとなったものの、キリンの再逆転を許さないための決断だった。

値下げによりこの年の4社の利益は大きく飛んでしまうが、それ以上にビール類市場の縮小幅はこの年から広がっていく。安価になった商品を、消費者は価値のないものと判断していった、と捉えられよう。人口減少、缶チューハイの台頭、20代のビール類離れなど複数の要因も背景にはあった。

一方で、ダイエーがイオンの完全子会社になるなど、大手流通の合従連衡は続き、優勝劣敗が鮮明になりつつある。

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ビール類以外の価格調整の可能性

人口は増えずにビール類市場拡大は、見込みにくいなか、この10年強で国内営業が中心だった大手4社の事業構造は変わっていく。

アサヒは2016年、2017年に欧州のビール会社を相次ぎ買収。合計で1兆1600億円を投じ20年にも豪州のビール会社を1兆1400億円で買い、昨年末には30億ドルを投じて東アフリカの酒類会社のM&A(企業の合併買収)を決め、いまは海外の売上比率は国内より大きい。

サントリーも、2014年だったがアメリカのウイスキー大手を1兆6400億円で買収。蒸溜酒の世界展開に力を入れている。

キリンは豪州やカナダの健康食品会社を相次ぎ買収し、ヘルスサイエンス事業の強化を進める。サッポロは、不動産子会社を段階的に売却し、売却で得た資金を変わらずに国内営業に注力していく。

カルテル疑惑の発覚後、中堅スーパーの酒類バイヤーは次のように語る。

「あるビール類会社の場合、コロナ禍で値上げのあった2022年頃まで、年間で10万箱(1箱は大瓶20本)を我々が販売しなければ、当社にリベートは回ってこなかった。

これがいまは、ワインや洋酒なども含む年間取引額がリベートを得る条件に変わり、実はハードルは高くなった。条件をクリアできなかった中小の小売りにはリベートは渡らず、メーカーの利益はその分膨らむ。他の3社にも、リベートの条件はそれぞれある」

メーカーによるビール類以外の価格調整の可能性をも示唆する。