時代は変わっても密室は続く

なお、リベートはメーカーから卸に回り、卸から小売りに流れる。2005年に小売りの販売数量に応じて流れるリベートはなくしていく方向を4社は打ち出した。が、「形を変えていまも存在する。その分取引は複雑になっている。また、卸の仕入値はオープンではなく、大手4社の価格調整の実態は分からない」とバイヤー。

続けて「メーカー4社が事前に値上げ幅を決めていたのなら、コスト上昇があったとしても独禁法上、問題だ。水面下の調整が卸や小売りの取引条件にどう影響したのか…、小売りや消費者が本来得るはずの利益がどれだけ失われたのか…、こう考えると悔しい」と憤る。

国内市場の先細りが継続しているなか、大手4社の営業活動は軽視されてきたのか、といえばそうでもない。むしろ、営業活動に効率アップが求められていた。リベート条件の設定などから少人数でどう売り上げや利益を確保していくのかが問われている。

ビール会社の営業は、かつては卸に酒販店、料飲店と、どぶ板を回り、人間関係を築きながらビールを売りさばいていた。しかし、いまはどうやら違う。

あるビール会社の営業経験者は、「特にこの10年は、数字だけでしか評価されなくなった。クールに」と言う。

縮小が続く市場で、与えられた予算数字は必達を求められる。そうしたなか、定価販売だった時代から慣行のようにして営々と継続してきた大手4社による横並びの価格改定。調整が事前に密室で行われてきた可能性は、否定はできない。

販売数量の公表をやめた

それともう一つ。アサヒは2020年から、キリンは2025年から、販売数量の公表をやめてしまっている(サントリーとサッポロは公表し続けている)。両社とも「過度なシェア競争を避けるため」と理由について口を揃える。業界1位と2位が数字を出さないため、ビール類産業の規模をはじめ実像が現在は見えなくなっている。

見えないと、水面下での当事者間による調整はやりやすくなっていく。外部への情報発信がない世界では、自分たち本位の内向きな体質へと変容しやすくなる。販売数量などであやふやな推測値が一人歩きしていくと、そんな産業に明日はなくなっていく。

そもそも、4社の営業担当者が密談したとされるが、その場で大手2社の販売数量は情報共有されたのか。市場全体の規模、趨勢が分からなければ、4社間で出荷価格を調整しようにも、難しくなる。情報共有がされた否かは、カルテル解明へのキーになっていく。社会に公表されない数値情報は、4社の中でどんな経路でどこまで、どのように伝えられていったのか。組織的な関与の調査にも、つながるはずだ。