国家を「平時→戦時」に切り替える

中国は8月28日、2010年制定の国防動員法を全面改正した。施行は10月1日である。新法は14章82条からなり、「平戦快速転換」――平時から戦時への迅速な転換を可能にし、経済力・社会力を国防力へ変換することを、国防動員の目的として明記している。

内容は広範囲にわたる。後備兵員の把握と招集。戦略物資の備蓄。軍需品の研究開発、生産、修理能力の確保。企業に対する軍需品への転産・増産体制。車両、施設、設備など民間資源の徴用。さらに国防動員が発令されれば、金融、交通、郵便、通信、インターネット、放送、エネルギー、医療、食料、商業までを国家が管制できる。人の移動についても、区域、時間、方法を制限できる。

つまり中国が作ったのは、単なる徴兵法ではない。中国社会全体を短期間で戦争遂行体制に組み替えるための法律である。

人の移動を管理する規定も整備

しかも同法の施行に先立つ9月15日には、新しい「出入国管理に関する国務院規定」(国務院令第841号)が施行された。これは中国人全員の出国を禁じる法律ではない。ただし国家は「中国公民出境安全リスク防止制度」を整備し、出国審査を強化する。高リスク地域への渡航を当局が制止する制度も盛り込まれ、出入国申請の際には本人に資料や電子データの提出を求めることもできる。

国防動員法だけを見れば「軍事法制の近代化」と説明できる。出入国管理だけを見れば「在外国民の保護」と説明できる。だが、人を動員し、物を動員し、企業を動員し、情報を管理し、人の移動を管理する制度が、数週間のうちに揃うのである。これを安全保障の文脈から切り離して読むほうが、よほど不自然ではないだろうか。

中国のパスポートとスタンプ
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そして7月6日、中国は南シナ海から南太平洋に向けてSLBMを発射した。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、飛翔距離は約7300キロ。JL-2またはJL-3とみられているが、JL-3であれば最大射程は1万キロを超える。米国防総省もJL-3の射程を約1万キロと評価しており、適切な海域から発射すれば米本土の大部分を攻撃可能である。中国が原子力潜水艦から戦略核攻撃を実施できる能力を、インド太平洋で公然と示した初めてのケースだった。

この意味を過小評価してはならない。