海外メディアは日本の猛暑をどう見ているのか。在米ジャーナリストのシェリーめぐみさんは「職員が短パンをはいて省エネに努める一方で、温暖化の原因となる石炭火力の使用量は増えている。海外はそのアンバランスさを不思議がっている」という――。
オフィスでショートパンツを着用している男性=2024年5月27日
写真=TT News Agency/共同通信イメージズ
オフィスでショートパンツを着用している男性=2024年5月27日

他の国とはことなる日本の省エネ対策

東京ではこの夏、職員が短パンで出勤する――。

そんなニュースが海外メディアを賑わしている。

英ガーディアン紙は、「東京都は省エネと暑さ対策のため短パンの着用を推奨」という見出しで、この取り組みを紹介した。少しでも涼しい服装で働けば、熱中症を防ぎ、冷房に使う電力も抑えることができる。合理的な取り組みだという評価である。

しかし海外メディアが注目したのはそれだけではない。

英BBCの見出しはこうだ。

「男性の職場での短パン着用に対し、女性からは『脚の毛ハラスメント』との声」

記事では脚の毛によるハラスメント=スネハラをそのまま「SUNE-HARA」と表記している。暑さと節電のための取り組みのはずが、いつの間にか「男性が短パンをはいてよいか」という身だしなみ論争に変わっている。その日本らしい展開を、BBCは興味深く伝えている。

だが、この光景を少し離れた場所から見ると、別の疑問が浮かぶ。

なぜ日本では、これほど暑くなり、エネルギー価格が上がっても、議論されるのは服装や冷房の設定温度なのだろうか。

BBCは、短パン解禁の背景について、イラン情勢による電力需要の高まりに備え、節電を図る狙いがあると説明している。同じ報道では、アジア各国の対応も紹介された。在宅勤務や労働時間の短縮、電力使用の制限などである。

エネルギー危機は国民の力で乗り越えた

もちろん、各国のエネルギー事情は異なる。それでも並べてみると、日本では危機への対応として、まず服装を含む一人ひとりの工夫が前面に出ているように映る。

なぜ日本では、危機が起きるたびに、国民の工夫や努力がこれほど重視されるのだろうか。

その背景には、日本が半世紀をかけて築いてきた、省エネの成功がある。

日本は、省エネを国民生活に定着させることに成功してきた。冷房の温度を控えめにする。照明を消す。家電の電源を切る。服装を軽くする。企業も家庭も、長年にわたって小さな節約を積み重ねてきた。

特に、エネルギー危機が起きるたびに、省エネで対応してきた。

1970年代のオイルショックでは、工場、自動車、家電の効率を大幅に改善した。2011年の福島第一原発事故後には、全国規模の節電が行われた。そして今、イラン戦争によってエネルギー供給への不安が高まるなか、服装をさらに軽くして冷房を抑えようとしている。

これは単なる我慢ではない。

日本は半世紀をかけて、省エネを技術、制度、企業経営、生活習慣の中に組み込んできた。