化石燃料を使い続ける矛盾

ところがここにひとつの矛盾がある。

世界の省エネをリードしてきた日本では、エネルギーをつくる側の構造改革は、十分な速度では進んでいない。特に電源の脱炭素でおくれをとっている。

国際エネルギー機関は、日本のエネルギー供給の炭素集約度が、加盟国のなかでも高い水準にあると指摘している。

2024年度、日本の発電量の約3分の2を火力発電が占めた。石炭だけで約28%に上る一方、再生可能エネルギーは23%余りだった。

OECDも、日本では、エネルギー効率が上がっている一方、電源構成は依然として炭素集約的だと指摘している。

省エネによって電力需要を減らすことはできる。しかし、それでも電力を石炭や天然ガスでつくり続ければ、排出量の削減には限界がある。

つまり、今問われているのは、どれだけ電気を節約したかだけではない。その電気を何からつくったかである。

もちろん、日本の脱炭素がまったく進んでいないわけではない。近年は、化石燃料による発電の比率は低下し、再エネと原発の比率は上昇している。

問題は、変化の速度があまりに遅く、政府自身が掲げた目標を実現する政策が追いついていないことだ。国際的な気候政策評価プロジェクトClimate Action Trackerは、日本の政策と実行を「不十分」と評価し、より踏み込んだ政策を実施しなければ、2030年の削減目標を達成できない可能性があると指摘している。

OECDも2026年、日本の電源構成はなお化石燃料への依存が大きく、2050年のネットゼロを実現するには、政策の実行を加速する必要があると評価した。中でも問題として指摘されたのは、石炭火力を廃止する明確な道筋の欠如だった(※)。目標はあるが、実行に移す期限と工程がない。政策は、構造転換に必要な速度から大きく遅れている。

(※ OECD Economic Surveys: Japan 2026

工場の煙突から出る大量の煙
写真=iStock.com/kodda
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決して再生エネ資源がないわけではない

今回のイラン戦争は、日本の化石燃料依存の構造をはっきり示した。

ホルムズ海峡を経由するLNGの輸入が不安定になると、日本政府は、CO2削減のためにブレーキをかけていた低効率の石炭火力の運転を増やす方針を決めた。LNGを節約し、電力の安定供給を守るためだ。

ロイター通信は、今回の危機によって、日本の輸入化石燃料への依存が、経済と安全保障の弱点として露呈したと報じた。

記事の中で、自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエ理事長は、太陽光、風力、蓄電池による国内電源を増やすことが、供給途絶や軍事攻撃への備えにもなると指摘している。

しかし、現実に選ばれたのは、「化石燃料を減らす」ことではなく、「不足した化石燃料を別の化石燃料で補う」ことだった。

問題は、緊急時に石炭を使ったことだけではない。輸入途絶という想定できたリスクに対し、再エネ、蓄電、地域間の電力融通が、石炭に代わる現実的な選択肢として育っていなかったことである。

日本には再エネ資源がないわけではない。

それを発電し、遠くへ運び、市場に接続する制度とインフラが追いついていないのである。

実際、2025年には、太陽光や風力で発電できるのに、その出力を一時的に抑える「出力制御」が増えた。