ドラマの仕掛け人であるNHK「軍師官兵衛」チーフ・プロデューサーの中村高志氏が、現代と戦国の共通点を挙げつつ、いま取り上げる理由を明かす。

【理由1】
●現代ビジネスマン――夢を追うだけでなく、日々の生活も重視
●官兵衛――生き残ることに必死だった

岡田准一さん演じる官兵衛が生きた戦国時代は、切った張ったが日常茶飯事で、若くして人が死ぬのがあたりまえでした。そういう時代にあって、官兵衛は一つのことを常に考え行動していました。「生き残る」ということです。

死が身近にあるからこそ、生にこだわったのでしょう。しかも官兵衛のおもしろいところは、周りの人も生き残ってほしいと願ったこと。敵ですらそうでした。敵は殺さなければ後で自分が殺される時代に、「人は殺してしまえばそれまで、生かしておけば使い道がある」と考えていました。

官兵衛は播磨の小大名の家老の長男として生まれました。天下統一はいまだならず、戦乱にあけくれた時代。誰の下につくかといったぎりぎりの決断を強いられ、時には白刃の下を潜り抜け、遂には頼みとしていた主君や盟友に裏切られながらも、とにかく生き残ったのです。

戦国時代に生を享け、信長、秀吉、家康という天下人3人に仕えて名をなし、その子孫は大大名として代々栄えた。こんな人物は日本の歴史で極めて珍しい。バブル崩壊後の長引く不況、震災と、日本人は大きな災厄に見舞われてきました。現代のわれわれも「乱世」を生き抜いているといってもいい。震災から3年、「元気になりたい」「元気になるものを見たい」と考えている人も増えているように思います。過酷な状況を生き抜いた官兵衛から、われわれは命の大切さや生きることの尊さを学ぶことができるのです。