認知症患者数の急増が懸念される中、脳の健康に対する関心はかつてないほど高まっている。世界保健機関(WHO)によると、世界では現在、5500万人以上が認知症を抱えており、その数は2050年までに1億3900万人に達すると予測されている。
アルツハイマー病に対する不安が高まる中で、将来のリスクを減らすために、いま何かできることはないかと考えている人は多いだろう。
神経科医でアルツハイマー病を専門とするデイヴィッド・パールマッターによれば、脳の健康に影響を与える習慣の多くは、驚くほどシンプルで、自分の意思でコントロールできるものばかりだという。
「認知症は、加齢や遺伝によって避けられないというわけではない」とパールマッターは言う。「遺伝的要因はもちろん重要だが、それがすべてを決めるわけではない。アルツハイマー病に影響を与える要因の多くは、症状が現れる数十年も前から始まっており、日々の選択によって大きな差が出るということが判明している」
脳を守るためにパールマッターが意識的に避けている「6つのこと」を紹介しよう。
1.座りっぱなし
パールマッターが他の何よりも優先している習慣が、身体を動かし続けることだ。
「座りっぱなしの生活習慣は、脳にとって最大の脅威の1つだ」と彼は指摘する。パールマッターはほぼ毎日エクササイズを行い、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせている。
有酸素運動は脳への血流を増やし、「脳の肥料」とも称される「脳由来神経栄養因子(BDNF)」というタンパク質の生成を刺激する。一方で筋トレは、筋肉量の維持、インスリン感度の改善、炎症の抑制に役立つ。
「運動は、人間が手にできる『脳のための特効薬』に最も近い存在だ」とパールマッターは語る。
2.お酒をたくさん飲む
アルコールと脳の健康に関する科学的見解は、近年大きく変化している。長年にわたり、グラス1杯のワインは体に良く、アルツハイマー病のリスクを下げる可能性すらあると言われてきた。
しかし、パールマッターによれば、脳の健康を含めた総合的な健康に関して言えば「完全に安全と言える飲酒量」は存在しないことが、最新のエビデンスで示されているという。
「アルコールは炎症を引き起こす一因となり、睡眠を妨げ、長期的には脳の萎縮や認知症リスクの増加につながる」と彼は説明する。「私自身もたまにお酒を楽しむことはあるが、飲む量は最小限に抑えている」
3.社会的に孤立する
パールマッターは自分自身を「本来はあまり社交的ではないタイプ」だと分析しているが、親しい人間関係を維持するための努力は意識して行っている。
孤独と認知症の関連は、ますます無視できないものになっている。60万人以上を対象とした2024年の大規模なメタ分析では、孤独を感じている人は認知症を発症するリスクが31%高いことが明らかになった。
人間関係を大切にすることが、結果として認知症リスクを減らす最も強力な方法の1つになっていることは、「うれしい副産物だ」とパールマッターは述べる。

