今年6月、日経平均株価が7万円を突破した。海外の金融機関は、日本の株高をどう見ているのか。フランスに本社を構える独立系運用会社・コムジェストで日本株を担当するリチャード・ケイさんは「外国人投資家が積極的に“買い”を入れることで、株価が大きく上昇している。だが日本人にとって今の状況は、手放しで喜べるものではない」という――。(第1回)

本稿は、リチャード・ケイ『日本株を買う外国人 外国株を買う日本人』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

ビジネス街の電光掲示板に掲示されたストックボード
写真=iStock.com/chachamal
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日本株の現状に「危機感」を覚えるワケ

1990年代半ばから30年以上にわたり日本の株式市場、上場企業(※1)と向き合い、その「中身」、すなわち、新しい技術やサービスをつくり出そうとする人たちの想いや願いを読み取り、投資すべきかを判断し続けてきたわけですが、土地や不動産に比べると、日本株の現実に向けられる「眼差し」の温度の低さに、私は危機感を覚えています。

それは、日本の上場企業のオーナーシップ(※2)が、日本人の手からじわじわと離れ外国人に向かっているという現実です。土地と上場株では流動性に大きな違いがあるとはいえ、土地を買い取られることには不安を感じ、声を上げる人々が、自国の未来をつくり、暮らしを担う企業の株式が外国人の手元へと買い集められていることには、なぜこれほどまで無関心なのでしょうか。

外国人投資家の株式保有比率が高まると、企業の意思決定に大きな影響を与えます。たとえば、配当などの株主への還元策はもちろん、経営者の人事、さらには企業買収にも影響します。企業買収によって、日本企業が培ってきた知的財産や技術だけではなく、『非財務資産』(※3)が外国人投資家の手元にわたる可能性もあり得ます。

私自身、一人の外国人投資家としてこの市場に参加していますが、外国人投資家が旺盛な買いを入れることで株価が大きく上昇している、そして、その買いに国内投資家が応じている、今の状況を果たして日本のみなさまが手放しで喜ぶべきなのか。

日立の「株主の過半」は外国人

私は一人の投資家として、そして日本を愛する一人として、立ち止まって考えるべきだと言わざるを得ません。なんだか江戸幕府末期の攘夷論に似たことを申し上げているように思われるかもしれませんが、外国人投資家を締め出せ、出て行け、という当時の極端な思想ではありません。もはや、日本の株式市場において外国人投資家を抜きにすることは現実的ではありませんから。

私がこの文脈で問いかけたい相手は、外国人投資家ではありません。日本で暮らすみなさまなのです。当時の攘夷論との大きな違いは、日本人の考え方、構えです。当時は血気盛んな若い志士たちが攘夷論を訴えていましたが、現代の若者たちの多くは外国人投資家が日本株を大きく買い越している事実にはほとんど無関心な一方、米国株、全世界株で構成された投資信託の積立投資に勤しんでいるようです。

日立製作所は、この20年で大きな改革を成し遂げて株式市場からの評価を取り戻し、2026年4月末では株式時価総額(※4)20兆円を超える、日本株を代表する企業です。

その日立製作所の外国人投資家比率は2005年3月期末では36.4%だったのが、2025年3月期末には51.4%と半数を超えています。つまり、日立製作所が事業を通じてつくり上げた価値から生まれる各年の利益、そして積み上げてきた株主資本の半分は外国人投資家のモノだということです。そして、このような状況を生み出しているのは、日本の投資家、機関投資家(※5)と個人投資家の双方の投資行動に原因があるのです。

※1 上場企業:発行している株式が株式市場(証券取引所)で売買可能な企業のことを指します。
※2 オーナーシップ:企業の所有権のことを指します。企業の株式を保有すると、その企業の一部を所有する権利(オーナー、株主としての権利)を持つこととなります。その保有比率に応じて、企業の利益(配当)を受け取ったり、株主総会で経営に意見を反映させたりすることができます。
※3 非財務資産:決算書などで示される「業績」や「財務データ」には直接表れない、数値化することが難しい資産。
※4 株式時価総額:上場企業の株価に発行済株式数を掛けた数値。その企業自身の所有権100パーセントの時価を示しています。「その企業を丸ごと買い取るにはいくら必要か」の目安となり、企業の経済的な影響力を表しています。
※5 機関投資家:巨額の資金(年金や保険金、投資信託の資金など)を預かり、株式市場等で運用するプロの投資家のことを指します。銀行、生命保険会社、資産運用会社などがこれに該当します。