「株主資本主義」を正式に受け入れた

さらに極めて興味深いのは、グラフの通り、伊藤レポートが発表されたタイミングでもすでに外国人投資家が日本企業の株式の3割程度を保有していたという事実です。これらの施策が外国人投資家の日本株買いをさらに促した面はあるかもしれませんが、この事実は見過ごせません。というのは、この事実から、伊藤レポートをきっかけとした様々な改革は、日本企業の大株主である外国人投資家に対するアピール、つまり、日本企業は資本効率を高めようとしています、ここで我々を見切って売らないでね、というメッセージだったという見方もできるからです。

したがって、伊藤レポートは、日本がグローバルな「株主資本主義」を正式に受け入れることを世界に宣言した、象徴的な出来事と位置付けることも可能でしょう。それまで「会社は誰のものか」という問いを前にして「日本には日本のやり方がある」と、資本の規律を遠ざけてきた経営陣が、ついに白旗を揚げ、共通言語としてのROEという株主目線の指標を使い始めざるを得なくなった、ということです。

しかし、30年以上のキャリアを持つ私の目には、その受諾の仕方に横並び意識が感じられ、いかにも日本的であったようにも見えました。

上場企業が多すぎることの弊害

昨今では、東証に上場する企業全体で見るとROEは10%程度にまで改善しています。

伊藤レポートをきっかけに講じられた施策が成果につながっている面もあるものの、ここでも見逃せない事実があります。

リチャード・ケイ『日本株を買う外国人 外国株を買う日本人』(星海社新書)
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二極化です。すなわち、経営の規律を高め、成長のための投資等を通じて収益性、資本効率性を高めている企業と、そうではない企業の二極化です。前者に該当する企業は数多く存在します。これらの企業はROEで見ても、欧米の一流企業と見劣りすることのない、魅力ある投資対象です。しかし、他方で、後者の企業、つまり、依然として変わろうとする意識に乏しい上場企業も少なくありません。言わば、意識高く行動する企業が平均値を引き上げる一方で、意識の低い企業が足を引っ張っているのです。

このような二極化の根本の原因は、そもそも東証に上場する企業が多すぎることにある、というのが私の考えです。上場企業が多すぎる、と同時に、株式時価総額が小さすぎる企業が多数存在しています。こうした企業は、国内外の主要な機関投資家の調査・投資対象から外れてしまいます。その結果、経営陣は市場からのプレッシャー(資本効率改善への要求)に向き合わなくても済む、変わろうとする意識が低いまま温存されてしまう。これも二極化につながる一因です。

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