AfDはそもそもウクライナ支援に否定的である。そして、ウクライナの支援に回す所得があるなら、ドイツ国内、特に東ドイツのために使うべきだと主張する。移民・難民対策の厳格化も、その経済的・社会的コストをかけるくらいなら、そのコストは東ドイツのために使うべきだという主張である。これでは規制緩和などまず見込めない。
AfDは、確かに戦後ドイツ政治のスイングプレーヤーである。だからと言って、経済の文脈に限定すれば、AfDが今のドイツ経済の低迷を打破できる存在になるとは言い難い。仮に政権を奪取したとしても、それで国民の生活が豊かにならないのなら、民主制が機能する以上、AfDもまた人気が凋落し、議席を大きく失うことになるだろう。
カギを握る現実政党化
隣国のイタリアでは、ジョルジャ・メローニ首相の在任期間が9月4日で1413日となり、戦後最長を更新した。メローニ首相が率いる右派の与党「イタリアの同胞」(FdI)もまたかつてファシスト党時代を肯定したことで知られるが、政権獲得以降は過激な主張を抑制し、首相の卓越したバランス感覚のもとで、現実路線を歩んでいる。
FdIと連立を組む右派・同盟(Lega)の支持率が低下し、そこから分派して急速に支持を集める新興右派「国の未来」の影もチラつく中、メローニ首相が右派回帰に転じる展開も否定できない。ただし、圧倒的なボリュームを持つ中間層を切り捨てることにもつながるから、メローニ首相は来年の総選挙を見据え引き続き現実路線を歩むだろう。
またフランスでも、2027年春から初夏にかけて大統領選と下院選が予定されている。大統領選への出馬を表明している候補のうち、人気が頭一つ抜けているのは、右派の国民連合(RN)を率いるマリーヌ・ル・ペン候補だ。そのル・ペン候補もまた、幅広い有権者の支持を得ようと、右派的なトーンを抑えて、現実路線を強めている。
AfDもまた、地方選での勝利を重ねる過程で現実政党化している側面がある。しかし本気で政権を取りに行くなら、さらなる現実政党化は避けられない。そうして現実政党化し、政権を取ったところで、ドイツ経済の活性化のために必要な構造改革をなしえることができる可能性は極めて低いだろう。それだけ、ドイツ経済の病理は深刻だ。
日本でも、自民党に限ったことではなく、耳に聞こえのよい政策だけを並べる政党が数多い。言うは易く行うは難し、が世の常である中で、有権者に求められるものは、どの国でも現実を見据えた冷静な判断にほかならない。事態を単純化したうえで、まるでそれが特効薬であるかのように過激な主張を展開する風潮には、要注意である。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)
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