ドイツ全土で支持が広がっている

かつては旧東ドイツに限定されたこのAfD人気だが、今では旧西ドイツを含めたドイツ全土に広がっている。その最大の理由は、もちろん、これまでドイツ政治を牽引してきた二大政党であるCDUとSPDが、有権者が期待する成果をもたらしていないことにある。とりわけ経済面では、実質ゼロ成長が定着して長いことが大きいと言えよう。

コロナショックが生じた2020年を基準(100)とする実質GDP(国内総生産)の動きを確認すると、ユーロ圏全体の水準は直近2026年4-6月期時点で115まで上昇している(図表1)。これに比べると、ドイツはわずか106にとどまっている。参考まで、景気回復の勢いが弱い日本でも108だから、ドイツは日本以上に停滞している。

【図表1】実質GDPの推移
出所=EU統計局(ユーロスタット)、総務省統計局

特に2023年からの2年間、ドイツはマイナス成長を記録するなど景気の停滞がことさら深刻だった。オラフ・ショルツ前首相が率いたSPDを中心とする左派連立政権が行った諸政策、具体的には、野心的な引き上げを伴う最低賃金政策や再エネ発電に傾斜したエネルギー政策が、ドイツの国際競争力の低下につながったと考えられる。

経済的な文脈に限定すれば、2025年2月の総選挙で中道右派のCDUが政権に返り咲いたのは、それまでの左派連立政権による諸政策が、ドイツ経済の活性化どころか、停滞の長期化を生んだことが、有権者に否定的に評価された結果だ。しかしCDUも単独で組閣するだけの議席は獲得できなかったため、SPDという“毒”を飲んだ。

つまり、AfDと連立を組むことはできないという判断からCDUは姉妹政党であるバイエルンのキリスト教社会同盟(CSU)とともにSPDと連立を組んだが、その結果、CDUはショルツ前首相期の左派政策の修正に手間取り続けている。また左派政策の修正は、その実として国民生活に痛みを強いるため、有権者に不評でもある。

極右政党に構造改革ができるのか

AfD人気と裏腹に、CDUとSPDの支持率は低迷が顕著である。2029年までに予定されている次回の総選挙では、AfDが第一党になる可能性が極めて高い。ドイツ政治の特性から、少数与党による単独での組閣は難しいため、他の政党が連立工作に応じなければ、AfDは結局、組閣できず、次の政権も非AfD連合による連立になるだろう。

ただでさえ、今の大連立でも、ドイツ政治は“決められない政治”に陥っている。それが非AfDのためだけに党派性が異なる政党が連立を組むなど、それこそ寄り合い所帯そのものであるため、現在よりも決められない政治が悪化することになるだろう。他方で、AfDが、停滞の深刻なドイツ経済の活性化に必要な政策を実行できるかも微妙だ。

ドイツは今、典型的なスタグフレーション(景気停滞と物価高進の併存)の渦中にある。その改善のためには供給の刺激、つまりは規制緩和や減税などを通じて“小さな政府”を目指す必要がある。しかしAfDが主張する経済政策は、SPDが訴える左派政策と親和性が高い。左派政策は需要の刺激だから、スタグフレーションにはご法度だ。

2026年2月18日、マクデブルクで開催されたAfDの集会で、演説を行うウルリヒ・ジークムント氏
2026年2月18日、マクデブルクで開催されたAfDの集会で、演説を行うウルリヒ・ジークムント氏(写真=MatthiasK2007/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons