「あんまり」「たくさん」って何回?

質問を受ける側は、相手が知識不足であるということを考慮に入れた上で質問を整理し、誘導してあげる必要があるということです。また、相手が求めている回答の「レベル」を汲くみ取ることも大切です。

小学生がプロ選手に「どうしたらそんなにすごくなれるのですか?」と聞いたとき、選手が「周りの人に感謝することが大切です」と答えても、子どもの期待とはズレている回答かもしれません。「ご飯をいっぱい食べて、一生懸命練習することだよ」と、相手の理解を超えない範囲で答えるのが有効なケースも多いのです。

ちなみに、菊池雄星投手がアナウンサーから「どうやったらそんなに速い球を投げられるのですか?」と問われ、一言「スクワットで鍛えることです」と回答したのは、その場の雰囲気を捉えた痛快な回答でした。

【③副詞と形容詞を多用しない】

ある日、指導者とスポーツ選手の間に、こんな会話がありました。

選手:「すみません、白米は週に何回くらい食べてもいいですか?」
指導者:「うーん、あんまり食べない方がいいですね」
選手:「週に1回くらいならいいですか?」
指導者:「うーん、あんまり食べないでね」

この「あんまり」の基準は、両者で食い違っている可能性があります。選手は明確な基準が欲しかったのです。「たくさん練習しろ」と言われて毎日100回素振りをしていた選手が、指導者に「1000回やらなきゃダメだろ!」と叱られる。これは理不尽です。

曖昧な副詞・形容詞は解釈が変わる

指導者の言う「たくさん」の基準値が違っただけなのです。こういった食い違いの理由はただ一つです。解釈を相手に委ねる言葉を使ってしまっているからです。「たくさん」とか「もっと」などの副詞や、「柔らかい」とか「大きい」などの形容詞は解釈の違いが生じます。

副詞
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だからこそ、教えるときは「天井に触るくらいジャンプして」とか、「2日以上間隔をあけないで」と、具体的な目標物や数値を明確に示すことで、解釈の不一致を排除することが大切です。

「曖昧な指示」の例にトイレ掃除の逸話があります。

ある日、上司が部下に「トイレ掃除をしておくように」と指示したものの、後から上司がトイレをチェックしていたら全然綺麗になっていなかったというのです。「どうしてトイレ掃除をしなかったんだ」と叱ったところ、部下は「しました」と言い、同僚も「確かにあいつ、トイレ掃除をしていましたよ」と言います。

確かによく見ると便器はピカピカに磨いてありました。でも上司からすると全然できていない。これは上司が「①床の隅までホコリがないようにする」「②ペーパーを三角に折る」「③鏡の水滴を拭く」といった明確な指標を提示していなかったからです。自分と相手の「綺麗」の基準は違うのです。明確な指標なしに人は動けない、ということを心得ておきましょう。