戦争における「予備計画」の重要性
たとえば、バルチック艦隊を破った秋山真之。
彼の立案した「丁字戦法」は「黄海海戦」で見事に破られました。
しかし、彼はこの失態から学びます。
まず「次(日本海海戦)」に備えて「丁字戦法」に修正を加える。
のみならず、前回のように事がうまく運ばなかったときのための“予備計画”を準備万端に調える。
①敵艦を発見したらまずは第一段の奇襲攻撃で機先を制す
②万一それが失敗しても、第二段で「丁字戦法」をしかけて本戦を戦う
③もし陽が落ちるまでに決着が付かなかった場合は、第三・第四段で夜襲
④それでも決着が付かなければ翌日も第五・第六段と追撃
⑤最後は第七段で掃討戦
……と「七段構え」の予定計画でバルチック艦隊を迎えます。
実際、第一段の「駆逐艦・水雷艇による奇襲」は、当日波が高く実行できずいきなり出鼻を挫かれる形となりました。
しかし、「予備計画」で第二段、第三段とつづけることで、無事、バルチック艦隊を撃滅することができたのでした。
戦争が泥沼化した時点で勝ちはなくなった
このように「予備計画」を立てておくことが如何に重要かがわかりますが、プーチンは「短期決戦」とだけ決め付けて、それが失敗したときの「予備計画」をまったく立てていませんでした。
そのため、「短期決戦」に失敗してそこから先は行き当たりばったり。
日中戦争・太平洋戦争で泥沼に嵌った戦前の日本の二の舞いです。
「歴史から学ばぬ者はかならず亡びる」とは、かのチャーチルの言葉ですが、我々はすでに学んでまいりました。
――短期決戦のつもりで始めた戦が長期化すればそれはすでに負け戦。
居合の命は抜き付けの一刀、これを躱されしとき勝機は細む。
居合は刀が鞘離れした瞬間に勝負を決める一閃必殺の剣です。
したがって、その初太刀を躱され長丁場となると勝機は一気に減じます。
現在のロシアも、戦争が泥沼化した時点で、もはや勝ちはなくなりました。
それでもプーチンは頑として白旗を振ろうとしません。
独裁者にとって大戦での敗北は失脚に直結してしまうためです。
しかし、そうした彼の“エゴ”によって、ロシアは甚大な国家的損耗を被ることとなりました。
孫子は説きます。
しかし、プーチンはこの理を理解できず、「ロシア」という国家そのものも道連れにすることになりました。

