戦争における「予備計画」の重要性

たとえば、バルチック艦隊を破った秋山真之さねゆき

彼の立案した「丁字戦法」は「黄海海戦」で見事に破られました。

しかし、彼はこの失態から学びます。

まず「次(日本海海戦)」に備えて「丁字戦法」に修正を加える。

のみならず、前回のように事がうまく運ばなかったときのための“予備計画”を準備万端に調ととのえる。

①敵艦を発見したらまずは第一段の奇襲攻撃で機先を制す
②万一それが失敗しても、第二段で「丁字戦法」をしかけて本戦を戦う
③もし陽が落ちるまでに決着が付かなかった場合は、第三・第四段で夜襲
④それでも決着が付かなければ翌日も第五・第六段と追撃
⑤最後は第七段で掃討戦モップアップ

……と「七段構え」の予定計画でバルチック艦隊を迎えます。

実際、第一段の「駆逐艦・水雷艇による奇襲」は、当日波が高く実行できずいきなり出鼻を挫かれる形となりました。

しかし、「予備計画」で第二段、第三段とつづけることで、無事、バルチック艦隊を撃滅することができたのでした。

秋山真之
秋山真之(写真=作者不詳/Public Domain/Wikimedia Commons

戦争が泥沼化した時点で勝ちはなくなった

このように「予備計画」を立てておくことが如何に重要かがわかりますが、プーチンは「短期決戦」とだけ決め付けて、それが失敗したときの「予備計画」をまったく立てていませんでした。

そのため、「短期決戦」に失敗してそこから先は行き当たりばったり。

日中戦争・太平洋戦争で泥沼に嵌った戦前の日本の二の舞いです。

「歴史から学ばぬ者はかならず亡びる」とは、かのチャーチルの言葉ですが、我々はすでに学んでまいりました。

――短期決戦のつもりで始めた戦が長期化すればそれはすでに負け戦。

居合の命は抜き付けの一刀、これをかわされしとき勝機は細む。

居合は刀が鞘離れした瞬間に勝負を決める一閃必殺の剣です。

したがって、その初太刀しょだちを躱され長丁場となると勝機は一気に減じます。

現在のロシアも、戦争が泥沼化した時点で、もはや勝ちはなくなりました。

それでもプーチンは頑として白旗を振ろうとしません。

独裁者にとって大戦での敗北は失脚に直結してしまうためです。

しかし、そうした彼の“エゴ”によって、ロシアは甚大な国家的損耗を被ることとなりました。

孫子は説きます。

――自国の損耗を最小限に抑えることが最重要項目であって、目の前の敵を打ち破ることなど二の次である。

しかし、プーチンはこの理を理解できず、「ロシア」という国家そのものも道連れにすることになりました。