兵法の基本は「戦を避ける」こと

我々はすでにさんざん学んでまいりました。

兵法の基本は「戦を避ける」ことだということを。

①まずは「政略」を駆使して戦争自体を避けることに全集中する
②それでもこってしまった場合は「戦略」を操って短期決戦に尽力する
③前線では「戦術」を活用し勝つことより損耗を少なくすることを心掛ける

そもそも「戦術」を駆使しなければならない状況に陥った時点ですでに政略に“失敗”しているのであって、これを挽回するのはかなり厄介なことだということも我々は学んでまいりました。

したがって、「露育戦争」の直前、「こたび戦争に至るや否や」の議論が湧いたとき、「勃発派」が大勢を占める中、筆者は「プーチンがまともであれば勃きない」と公言していました。

プーチンならそれくらいの兵法の基本はわかっていようと思っていたためですが、蓋を開けてみれば、彼は躊躇うことなく戦端せんたんを開きました。

どうやら筆者はプーチンを買い被りすぎていたようです。

あるいは、本来であればそれくらいの判断はできたのに、老害のためか、はたまた偏執病パラノイアが発症したかで、このときプーチンには“正常な判断”ができなくなっていただけかもしれませんが。

プーチンが犯した「真の失態」

たとえば、各方面から悪魔のごとく罵詈雑言を浴びせられているヒトラーですが、彼も若いころは優秀な政治家でした。

しかし、1930年代後半から偏執病の症状を発症、側近の諫言にも耳を貸さなくなり、めちゃくちゃな膨張戦争を始めて、そして破滅していきました。

プーチンもその轍を踏んでしまったようです。

ということは、プーチンを待ち受ける末路もまたヒトラーと同じものとなることでしょう。

しかし、開戦してしまったからには、つぎに彼が為すべきは「短期決戦」です。

そのあたりはプーチンもわかっていて、開戦より「早ければ数日、長くても10日前後で一気に終わらせる」つもりだったようですが、世の中、自分の頭の中で考えた通りに事は進まないもの。

それが大失態の引き金となったことはすでに触れました。しかし、専門家や分析家らの大方の予想も「開戦となれば、ウクライナなど2週間と保つまい」でしたので、プーチンが見誤ったとしても、そのこと自体は同情の余地がないでもありません。

彼の“真の”失態はそこではありません。

彼の“真の”失態は、万一計画通りにいかなかったときのための“保険”、すなわち「予備計画」を立てておかなかったことです。