ネットの批判が処分を重くした?

仮に、秋田県の説明を受け入れ、虚偽の説明=「減給又は戒告」に、虚偽説明の反復=「信用失墜行為」が加わったとしても、果たして6カ月の停職まで重くなるものだろうか。少なくとも、後者については、県のサイトには公表されていないし、報道を見る限りでは、詳らかではない。

となると、「SNSなどで、様々な情報が発信され、批判が殺到する結果」を、行政機関が重く見て、処分の検討にあたって、考慮したのだろうか。法令を最も遵守しなければならない行政機関が、世の中の空気に抗えず、「減給又は戒告」では炎上を鎮火できないと慌てて、加重したのだろうか。

もちろん、SNS上の批判が処分を直接重くしたと断定することはできない。県がどの事情をどの程度考慮して処分を決めたのか、その内部過程が明らかになっていないからである。だからこそ問うべきなのは、「SNSが処分を重くした」との断定ではない。SNS上の批判を、行政機関が懲戒処分の理由としてどこまで考慮してよいのか、と問わなければならない。

県職員の炎上は「SNS以前」から

とはいえ、ここで、SNS悪玉論を唱えたいわけではない。SNSが行政を歪めたのだ、と言いたいわけではない。たとえば四半世紀以上前にも同じような、地方自治体の幹部職員の炎上があったからである。

2000年10月、長野県知事選挙に当選した作家の田中康夫氏が、初めて登庁する。各部署への挨拶回りで名刺を配布していると、当時の企業局長が、「(社長が)社員に名刺を渡す会社は倒産する会社ですよ」と知事に応じた。それでも名刺を渡した知事に向かって、企業局長は「ないことにさせていただいてよろしいですね」と言いながら、名刺を折り曲げた。

田中康夫氏
元長野県知事で作家の田中康夫氏(写真=Booska/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

この一連のやりとりはテレビカメラの前で行われ、当日のニュースで全国に報じられると長野県庁には苦情の電話が殺到し、今で言えば炎上した。4日後に企業局長は辞表を提出したが、田中氏が慰留し、その職にとどまった。

今回とは逆に、集まった苦情を逆手にとって、田中氏が知事として、みずからの器の大きさを示した事案だったといえよう。