70歳まで「使う」のを待ってはいけない

高年齢者雇用安定法の改正により、希望すれば70歳まで働き続けることも可能な環境にある。周囲を見ても、70歳はともかく65歳までは働き続ける人は珍しくない。この年代までは、まだお金を使う時期ではないと考える人が多いようだ。

だが、70歳まで使うのを待つというのはリスクがある。夏休みシーズンということで、筆者も早々に沖縄方面に出かけたのだが、マリンスポーツの体験には明快な年齢制限があった。事業者にもよるが、シュノーケルのツアーに参加できるのは64歳までだったり、60歳以上のダイビングには医師の同意書が必要だという話も聞いた。

サービスを提供する側にとって、60代はすでに事故リスクを避けるために扱いたくない年齢なのだろう。「時間が出来たら挑戦したい」と長年楽しみにしてきた夢が、いくら健康状態に不安がなくとも年齢制限で叶わないこともある。「自分のためにお金を使いたい」なら、その現実を知っておこう。

さらに、この年代では親の介護が始まっているケースも多い。それによっては長期間の休みを取って――ということが難しくなる。「会社を辞めたら」「時間が出来たら」を引き延ばしているうちに、使うチャンスを逃してしまう。

そうならないために、60代を迎える前に「やりたいこと」をリスト化して、それにいくら必要かも計算してみよう。具体的な目標を立てると、使えるお金も明快になるし、何より使うことが楽しみになってくるだろう。

オープンカーでドライブをする老夫婦
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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年金で足りない生活費はいくらか

使う機会を逃さないことは大切だが、老後の生活費まで使ってしまうわけにはいかない。最初に確保すべきなのは、定年後の暮らしを支えるお金だ。

生活費の基本となるのはやはり公的年金なので、まず年金がいくら受け取れるかを調べ、企業年金や私的年金があれば受取額も確認したい。

次に、今の生活費を基準として、年金では足りない分(年間)×自分の余命をざっと算出する。そうすれば生活費として残しておくべき金額の目安が出る。「自分の余命なんてわかるか」と怒らず、100まで生きると思うならそれで計算してもいいし、厚生労働省が出している簡易生命表の平均余命を参考にしてもいい。

令和7(2025)年簡易生命表によれば、現在55歳の男性の平均余命はあと28.26年、女性は33.7年となっている。60歳の男性は23.86年、女性は29.07年だ。また、最も亡くなる人が多かった年齢は男性が約88歳、女性が約92歳。100歳まではなかなか生きられないようだ。

年齢を重ねるにつれて生活費は現役時代より2~3割減るとされる一方、そのぶん医療費が増えたり、今後インフレも加速する可能性もある。まずは現状の生活費を基準に算出するのがわかりやすい。

こうして算出した金額が、いわゆる「老後に2000万円必要」と騒がれたものに相当するが、実際に計算すればそれが一律の数字でないことはお分かりだろう。