「たとえ崖から落ちても構わない」

しかし、別の解釈も可能だ。

ムンクは何を叫んでいるのか?
井上響『ムンクは何を叫んでいるのか?』(サンマーク出版)

絵画では通常、後方が過去、前方が未来を表す。2人の背後は金色の虚空。つまり、何もない。しかし足元から鑑賞者側に向かって、花畑が広がっている。

つまり、2人の愛は「無」から生まれ、現実世界へと無限に広がっていく。崖は終わりではなく、始まりの場所なのだ。

さらに興味深いのは、女性のポーズだ。彼女は完全に男に身を委ねている。崖から落ちそうなほど体を傾けているのに、恐れる様子がない。

それは究極の信頼の表現かもしれない。

「あなたとなら、たとえ崖から落ちても構わない」と。

愛は天国でもあり地獄でもある。

永遠でもあり一瞬でもある。

安全でもあり危険でもある。

この絵にはそんな愛の本質が描かれているのかもしれない。

クリムトは1918年に他界した。だからこそ、彼がこの絵に込めた謎の答えは決して分からない。

あなたには、この崖がどう見えるだろうか?

グスタフ・クリムトの肖像写真
グスタフ・クリムトの肖像写真(撮影:Josef Anton Trčka)(画像=CC-PD-Mark/Wikimedia Commons
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