「たとえ崖から落ちても構わない」
しかし、別の解釈も可能だ。
絵画では通常、後方が過去、前方が未来を表す。2人の背後は金色の虚空。つまり、何もない。しかし足元から鑑賞者側に向かって、花畑が広がっている。
つまり、2人の愛は「無」から生まれ、現実世界へと無限に広がっていく。崖は終わりではなく、始まりの場所なのだ。
さらに興味深いのは、女性のポーズだ。彼女は完全に男に身を委ねている。崖から落ちそうなほど体を傾けているのに、恐れる様子がない。
それは究極の信頼の表現かもしれない。
「あなたとなら、たとえ崖から落ちても構わない」と。
愛は天国でもあり地獄でもある。
永遠でもあり一瞬でもある。
安全でもあり危険でもある。
この絵にはそんな愛の本質が描かれているのかもしれない。
クリムトは1918年に他界した。だからこそ、彼がこの絵に込めた謎の答えは決して分からない。
あなたには、この崖がどう見えるだろうか?



