145年前はたった数万円で落札

これほどの傑作が、かつて二束三文で売られていたことをご存じだろうか。

1881年、この絵が最後にオークションにかけられた時、落札価格は「2ギルダー30セント」だった。現在の日本円にして、数万円である。

なぜそんなことになったのか。当時、この絵は汚れがひどく、フェルメールの作品だと認識されていなかった。

そもそもフェルメール自身が、長い間忘れられた画家だったのだ。

フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」に関する特別展で同作品を鑑賞した愛子さま
写真=時事通信フォト
フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」に関する特別展で同作品を鑑賞した愛子さま=2026年8月20日、大阪市北区の大阪中之島美術館

19世紀にフランスの美術評論家トレ=ビュルガーによって「再発見」されるまで、フェルメールの名はほとんど知られていなかった。

回顧展が開かれ、研究が進み、評価が高まり、現在では数百億円の価値があるとも言われている。

誰でもない少女が、世界で最も愛される少女になった。

忘れられた画家が、巨匠と呼ばれるようになった。

この絵の物語は、美術の世界がいかに移ろいやすいかを、物語っている。

 フェルメールの自画像と考えられている『取り巻き女』中の人物
フェルメールの自画像と考えられている『取り巻き女』中の人物(画像=ドレスデン美術館所蔵/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons