クリムトの「愛の名画」のナゾ

男が女の頬に口づけをする、至福の瞬間。背景は金箔で装飾され、金色のきらめく空間が演出されている。

男は幾何学模様の衣をまとい、顔は見えない。

女は花冠をつけ、曲線的な模様の服を着て、恍惚とした表情で口づけを受けている。

足元には色とりどりの花が咲き乱れ、蔦が女の足に絡まっている。

美しい。完璧に美しい。世界中で愛される名画だ。

しかし、よく見ると不穏なことに気づく。

彼らがいる場所がおかしいのである。

なんと、彼らは崖の先で抱き合っているのだ。

なぜクリムトは、愛し合う2人をこんな危険な場所に描いたのか?

グスタフ・クリムト『接吻』
グスタフ・クリムト『接吻』(オーストリア絵画館所蔵)1908年(画像=CC-PD-Mark/ Wikimedia Commons

画家には多くの愛人と子がいた

1つの解釈はこうだ。

愛は美しいが、同時に危うい。どんなに深く愛し合っていても、一歩間違えれば奈落の底へ落ちてしまう。崖の縁は、愛の脆さの暗示なのだと。

クリムトの生涯を知れば、この解釈の説得力が増す。彼には多くの愛人がいた。14人の庶子がいたとも言われる。しかし、生涯独身を貫いた。なぜか?

愛の甘美さを知り尽くしながら、その脆さも知っていたから。だから結婚という「永遠」の約束ができなかったのかもしれない。