「5カ年計画」にもゲノム編集を組み込む
止められないどころか、中国政府は「科学技術力向上」を国家戦略に、研究開発と特許取得に巨額の予算を投入、1位アメリカの予算の8割まで追い上げる規模で世界2位に君臨し、3位の日本とは3倍もの差をつけている。
翌2016年に打ち出した「第13次5カ年計画」にも「ゲノム編集」がしっかりと組み込まれ、規制どころか文字通り、国をあげてイケイケどんどんの勢いだ。
この予算は年々拡大し、政府発表では2024年は3兆6300億元(約79兆円)と前年比で8.9%増、特許申請件数の方は180万件で、なんと世界全体(370万件)の半数を占めている。
2022年に、3年の刑務所暮らしを終えて出所し、早速科学界へ復帰すべく、精力的に動き始めた賀博士は、その後どうなったのか?
初めこそ『人間の遺伝子編集は慎重にする』と気をつけて発言していたが、ある時、若きベンチャー起業家と恋に落ちた。
動物の胚をゲノム編集した〈暗闇で光るペット〉シリーズ企画で話題を呼び、〈世界で最もお騒がせな科学者〉の異名を持つ、カナダ系中国人キャシー・タイだ。彼女と出会ってから、賀博士は元の野心を取り戻したかのように、SNSに次々と投稿し始めた。
バイオ研究をめぐる中国とアメリカのバチバチ
1330万人が閲覧した投稿は、自分の研究を潰した科学界や党への恨み節だ。
「倫理が、科学の進歩とイノベーションを妨害している」
だがこのめくるめくロマンスは、2人に思わぬ隙を生み出した。
「私は、賀博士がアメリカで市場を開拓する準備を手伝っているの」と、不用意にSNSで発信したタイは、後でその代償を払わされることになる。
On this day last month, I married the most controversial scientist in the world. Now, we may never see each other again. While I’m concerned about my marriage, I am more concerned about what this means for humanity and the future of science. pic.twitter.com/msTKnZUrHO
— Cathy Tie (@CathyTie) May 18, 2025
米国との熾烈な科学技術開発競争の真っただ中にいる、中国政府の逆鱗に触れたのだ。賀博士は中国からの出国許可が下りず、タイは中国に入国できなくなった。
若い企業家やハッカー、野心家の研究者たちは、この問題をめぐる中国政府の立ち位置を、まだまだ甘く見すぎているのだ。
自国に対する国際的信頼を損ねた賀博士に課された300万元の罰金と3年の刑期の裏には、ライバル大国アメリカがいる。
アメリカの大学で生物物理学博士号を取得し、卒業後も遺伝子研究を続けていた賀博士は、早い時期から当局にマークされていた。
バイオ医療の貴重な人材をアメリカに奪われたくなければ、就職する前に、手を打たねばならないからだ。
中国政府は、賀博士が遺伝子研究を終えるタイミングで、海外の高度イノベーション人材を中国に呼ぶ「孔雀計画」の一人にスピード認定、本土に呼び戻すなり、28歳という異例の若さで、副教授に就任させた。
