偶然立ち寄った町で、3日間に10棟を建設
「公民館に入ったとき、おじいちゃんから『解体屋か!』と言われて焦りました。でもそこで、僕を公民館に連れていってくれたTさんが『信頼できる人だで!』とフォローしてくれたんです。そこからは早かったですね。氷川町は、町長も町民のひとりという感じですごくフラットなんですよ。町のことをよく知っている人がプレーヤーになって、それをサポートするマネージャー的な人もいて、みんなが阿吽の呼吸でスピーディーに意思決定していて、すごいと思いました」
先述したように、北川さんは8月1日から3日間で氷川町内に10棟のインスタントハウスを建てた。さらに取材の日は施工業者が3人一組の2チームに分かれ、1日で6棟完成させた。このハイスピードを可能にしたのは、能登半島地震から得たふたつの学びがある。
能登半島地震まで、テントシートの内部に吹き付ける断熱材は10センチの厚みが必要だと考えていた。しかし、現地で実験を重ねるなかで、真冬の石川県でも4センチの厚みがあれば強度、断熱性能ともに十分とわかり、その分、施工のスピードが速まると同時に、コスト削減にもつながった。
家を建てながら、被災地の「生業」も再建
もうひとつは、地元業者との連携だ。能登半島地震のときには、それまで長い付き合いのある愛知県の断熱業者に施工を依頼していた。経験があるほうが、早く確実に仕上がるからだ。しかし、奥能登豪雨の際に石川県内の断熱業者と知り合ったのを機に、現地の業者にインスタントハウス設置のトレーニングをしたうえで依頼をすることにした。
「そうすることで生業の再建につながりますからね。断熱業者さんもプロフェッショナルなので、トレーニングで1棟建てればだいたいのことはわかりますから。今回の熊本地震では、クーラーの設置も氷川町の方から紹介してもらった方にお願いしました」
今回はできる限り早く設置を始めるため、福岡の糸島や熊本の阿蘇、鹿児島の屋久島にあるグランピング施設で施工実績のあるに福岡県の2社に声をかけた。そのうちの一社、伸和建工の社員で、Bさん宅のインスタントハウスを施工していたKさんは、こうコメントする。
「キャンプ地で設置した時、2、3時間で完成するので驚きました。しかも、クーラーをつけるとすぐに冷えて快適に過ごせますからね。スピードも早いし、コストも安いし、これを考えた北川教授はすごいと思います」
インスタントハウス設置の依頼が右肩上がりで増えていることもあり、今後は熊本県内の断熱業者のトレーニングを進めるという。




