被災者が安心できる「ホーム」に
それとは別に、北川さんは独自の方法でインスタントハウスを活用している能登の被災者と氷川町の被災者をつなぎはじめた。
「能登はまだ水道が復旧していない地域があるんですよ。そこではボイラーで川の水を沸かして、インスタントハウスのなかに置いた大きな湯舟にお湯を流し込んで、銭湯にしていました。町の人もボランティアの人もけっこう利用しているみたいで、なるほどなと。銭湯ってコミュニケーションの場でもあるし、疲れも取れるし、心も癒されるじゃないですか。だから、氷川町でも銭湯を作ったらどうかと思って、先日、能登の人と氷川町の人とビデオ通話で一緒に話したんですよ」
「インスタントハウスを使ってくれている人と話すと、驚きの連続、いや、教わりの連続かな」と、北川さんは楽し気に笑う。いまも数カ月に一度、能登に通っている北川さんがなによりも意外だったのは、インスタントハウスの利用者が愛着を持ち始めたことだ。
ある人はインスタントハウスを「この子」と呼び、ある人は「死ぬまで大切にする」と言った。離れた場所に自宅を建て直した人たちのなかには、わざわざ軒先に移設している人もいるという。輪島市に住む中学生の女の子に「ただいまって言える場所」と言われたとき、北川さんは「ただいまは、英語ならI’m home。ハウスがホームになったんだ」と実感したそうだ。
現在、氷川町だけで50組以上の希望者がおり、北川さんは町と二人三脚で次々とインスタントハウスを建てている。もうしばらくすると、1軒1700万円の仮設住宅の建設が始まるはずだ。しかし、数カ月後に入居が始まる頃、氷川町では「自宅敷地内にインスタントハウスがある風景」が当たり前になっているだろう。そこはもうすでに、被災者にとっての「ホーム」になっているのかもしれない。
名古屋工業大学の寄付サイトから、インスタントハウス設置の寄付ができる。熊本地震での設置希望者数を満たすためには、まだまだ寄付が足りないとのこと。


