とんでもないサプライズがある
ところが――あるページに、とんでもないサプライズが待ち受けている。といっても、このシリーズを今まで読んだことのないひとにとっては、何がサプライズなのかわからないかもしれない。だがシリーズの愛読者にとっては、そのページに辿りついた時に著者のやりたかったことが一瞬でわかるのだ。そして、この第2部が湯川と草薙の「終活」として描かれている意味も。
私が衝撃を受けたのは、このページで明らかになる、著者の過去の作品との関連だ。著者は、自作について、あるいは自作への世評に対して表立って語ったり反応することはほぼなく、「ただ作品をもって語る」タイプの最たるものだった。その著者にして、「あのこと」はずっと心のどこかに引っかかっていたのか。いつか、作品をもって必ず応答しなければならないと思い続けてきたのか。
東野氏が書き残しておきたかったこと
ネタばらしを避けるため、「あのこと」というのが何なのかは具体的には書けない。著者の愛読者なら皆が知っていること、とだけ記しておく。本書の決着をどう評価するかは、読者それぞれに思うところがあるはずだ。しかし、これはこの世を去る前に、著者がどうしても書き残しておきたかったことなのだろう。こうして常に読者を驚かせ、かつ誠実に、自分の構築した物語を深めていく著者だからこそ、こんなに多くの読者に愛され、記録的なベストセラーを連発できたのではないか。
闘病生活を送っていた著者が、本書が遺作になることをどこまで意識していたのかはわからない。まだまだ書きたい話はたくさんあっただろうし、遺作となったのはあくまで結果だとも言える。だとしても、これほど遺作らしい遺作というのもなかなかない――そう感じるのも事実である。作家人生として、あまりにも鮮やかで、美しい幕引きだった。今はそのように評しておきたい。

