福山雅治がガリレオこと湯川学を演じた
その作品群の大部分が映画化・ドラマ化などメディアミックスされ、それによって知名度を更にアップさせているのも著者の特色で、たとえ原作は読んだことがなくても、阿部寛主演の加賀恭一郎シリーズ、福山雅治主演の湯川学シリーズの映画やドラマを観たことがあるひとは多いに違いない。
それほどの人気作家だった東野圭吾が、68歳でこの世を去ってしまったのだ。ミステリ界、いや、エンターテインメント界にとって、あまりにも巨大な喪失であった。
そんな喪失感を抱えた状態で、私は『永遠の記憶』を読みはじめた。そして、冒頭に記したような茫然自失状態に陥ったのである。
『永遠の記憶』――まるで東野圭吾という存在そのものを象徴するかのような、あまりにも意味深長なタイトルがつけられたこの作品は、天才物理学者の「ガリレオ」こと湯川学の活躍を描いたシリーズの第11作にあたる。
このシリーズの第1作『探偵ガリレオ』は1998年に刊行された。湯川学が大学時代からの友人である警視庁捜査一課の刑事・草薙俊平(ドラマ・映画では北村一輝が演じた)の依頼を受け、まるで超常現象のような不可解な事件を、科学の知識によってロジカルに解決していく短篇集である。元エンジニアの著者らしい、理系の知識がふんだんに盛り込まれた謎解きで楽しませてくれる1冊だ。
直木賞受賞作もガリレオシリーズ
その後、同様の趣向の第2短篇集『予知夢』が2000年に刊行されているが、シリーズの転機となったのが、直木賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞することになるシリーズ初の長篇『容疑者Xの献身』だ。
この小説には、石神哲哉という天才数学者が登場する(映画版では堤真一が演じた)。彼は、隣人の母娘が殺人を犯してしまったことを知り、彼女たちを救うために巧妙な隠蔽計画を立てる。草薙刑事ら捜査陣は母娘を疑うが、アリバイは完璧でどうしても崩せない。そこで草薙はいつものように湯川に相談を持ちかけるが、奇しくも湯川と石神は大学時代に友人同士であり、お互いを天才と認める仲だった。
この長篇で著者は、短篇では描ききれなかった湯川の人間性を掘り下げようとした。彼は旧友の犯罪をいかに解き明かし、最終的にどのような決断をしたか――ここでの湯川はそれまでの超越的な天才ではなく、悩みもすれば苦しみもするひとりの人間である。湯川というキャラクターは、この作品で更なる人気を集めた。

