6つの仕事を掛け持ち、徹夜で準備をする日も

現在、60歳となった山田さんは英進館のほか個別指導塾2校、家庭教師3件、計6件の仕事を掛け持ちしています。仕事に対する姿勢を聞いてみると、とても生徒思いで誠実でした。

「午後から出勤することが多いので、今は生徒のためにプリントを用意するときは、ほぼ毎回徹夜しています。浪人中、これほど勉強したことがないっていうぐらい、今は勉強しています。生徒の何十倍も知識を持っていないと、わかりやすく噛み砕いて教えられないし、自分も自信を持って教えられない。だから、そこに時間をかけるのは譲れないんです」

山田さんが手書きで作成している授業用のプリント
提供=山田洋さん
山田さんが手書きで作成している授業用のプリント

ここ2〜3年で一番高い買い物を尋ねると、「Amazonで4万円ちょっとしたパソコンのプリンター」と答えてくれた山田さん。

それも塾で大量のプリントを作るので、インクがあっという間になくなってしまうため、大容量のインクを使えるエコタンク式のプリンターを買おうと思ったそうです。

年収180万円の山田さんにとって、ここ最近で一番の贅沢は仕事道具だったのです。

浪人していた間は勉強にさほど根を詰めていなかった山田さんは、塾講師になって初めて、本気で机に向かうようになりました。

150人中1位と、真似できないキャラ

英進館では、生徒による授業アンケートがあります。全ての先生を採点する仕組みで、山田さんは英語担当の常勤・非常勤を含めた講師約150人の中で、1位を獲得したことがあります。

それも一度ではなく、1年のうちに複数回、通算で6回ほど1位を取ったといいます。講師としてのキャリアはまだ2〜3年目の頃のことでした。

「真面目な話ばかりしているわけではないので、時折挟む雑談が面白かったのかもしれません。当時勤めていた英進館の教室長から言っていただいたことをよく覚えているのですが、『山田先生はキャラでだいぶ得をしている。教え方は真似できても、キャラは真似できない』と」

カナダに留学していたころの山田さん。当時は51歳
提供=山田洋さん
カナダに留学していたころの山田さん。当時は51歳

浪人時代を乗り越えた持ち前の明るさで、生徒たちに光を当てているのだと思いました。

150人中1位という評価の裏には、単なる人当たりの良さだけでなく、19年間の浪人生活で積み重ねてきた経験があったように思います。魚民やデニーズでの接客のアルバイトを通じて培った、初対面の相手との距離の詰め方や場の空気を読む力。

そして、生徒として数えきれないほどの授業を受け続けてきたからこそ身についた、わかりやすい授業の感覚。浪人時代に積み上げてきたものが、そのまま生徒から支持される授業をつくる土台になっているのだと感じました。