数字ではなく、体験でオトクと感じる

理由は単純です。30円引きと言われても、お客様はそれほど得した気分にはなりません。財布に入れておこうという気持ちにもなりにくいでしょう。でも、「海老天無料」と言われたらどうでしょう。

「これは得だ」

そう直感的に感じてもらえます。人は数字ではなく、体験でお得さを感じるのです。

この読みは当たりました。

当初は年1回だけのつもりだったクーポンは、好評だったため年2回になり、現在では3月・6月・9月・12月の年4回実施しています。実際には各回15日ほど配布し、残った分を翌月初めに配布するため、「月初になるとクーポンをもらえる」という印象を持たれている方も多いでしょう。

もちろん、有効期限も設けています。「また来よう」と思っていただくための仕掛けだからです。

加盟店も納得しやすい「原価処理」

実は、このクーポンには社内の仕組みにも一つこだわりがあります。例えば海老天を無料でお渡しした場合、その分は販促費ではなく、原価として処理しています。一見すると、販促費として計上した方が自然に思えるかもしれません。

しかし、そのやり方ではお店の売り上げが見かけ上増えてしまいます。さらにロイヤリティーが売り上げ歩合なら、その分だけ加盟店の負担も増えてしまいます。

私は、それが嫌でした。ゆで太郎のロイヤリティーは売り上げの5パーセントです。だからクーポン分は売り上げを立てず、原価として処理する。その方が加盟店さんにも納得していただけます。

池田智昭『ゆで太郎の儲かる仕組み 22年連続黒字を支えるがっちり経営術』(ワニブックス)
池田智昭『ゆで太郎の儲かる仕組み 22年連続黒字を支えるがっちり経営術』(ワニブックス)

クーポンは値引きではありません。お客様にもう一度来ていただくためのセールスプロモーションです。

「得した」

そう感じてもらえれば、その満足感は次の来店につながります。実際、今では加盟店の皆さんもクーポンを歓迎してくださっています。現場で、お客様が喜んでいる姿を見ているからです。人は、30円引きではあまり心は動きません。でも、「無料」という言葉には強く反応します。同じような金額でも、伝え方一つで価値の感じ方はまったく変わる。

何気ない思いつきから始まったこのクーポンは、今ではゆで太郎にとって最も強力な販促ツールの一つになっています。

まとめ
値引きではなく、「無料」という体験がお得感を生む

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